お題

□線香花火がおちる
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夏休み中は、ホグワーツは閉校する。夏休みが始まる前は、皆バカンスの話題で持ちきりだった。

ジェームズやシリウスらは、わたしを見ながらなにやらひそひそ話をしていた。なんなんだ。

ホグワーツに通う生徒には、ちらほらアジア圏から来た生徒はいる。けれど日本から来たのはわたしだけだった。
なのでホグワーツ三年目の今年も、ひとりで帰郷する予定だったのだが。


「名前」

『あ、セブルス、』

「…………」

『………?』


わたしとセブルスは、グリフィンドールとスリザリン、因縁のある敵寮同士であったが、リリーと仲の良いわたしは、リリーの幼なじみでもあるセブルスとも仲良くなった。
試験勉強を共にしたり、図書室でお互いオススメの本を教えあったり、たまに二人でいるときにジェームズたちが悪戯してきたら、そいつらをわたしとセブルスがタッグを組んで反撃して勝利したり。

そんな彼との関わりの中で、ほのかな恋心を抱かない方がおかしいと思う。
そりゃ、今目の前で髪の毛は油でギトギト(今日は暑いからかな)、目を泳がせながら(何か言いたそうな時、よくする動き)、うろたえているどう見ても不審者にしか見えない外見だけれども、彼の内面を知れば、きっと誰だってノックアウトするだろう。
セブルスは絵に描いたようなイギリス紳士だから。


「今年も、実家に帰るのか…?」

『あ、うん。そのつもり』

「…そうか………」


ん?去年の夏休み前もこんな会話をした気がする。


『去年さ、家にポートキーを備え付けたから一瞬で日本に帰れるんだよ』

「う、うむ」

『……セブルス、日本に来る?』




そんな会話の後、セブルスがジェームズたちに騙されていたことが判明した。わたしが今年、実家に帰る時に使うポートキーに彼らが、悪戯をしてやった、きっと名前は北極でシロクマと夏休みを過ごすんだぜ、なんて言っていたことを、ポートキーで飛んだあとに、苦い顔をしたセブルスが教えてくれた。
あいつらなんてことをセブルスに言うんだ。彼はかなりの心配性なんだぞ。リリーがジェームズたちと仲良さげ喋っている時、わたしの横に座りながら2秒に一度はリリーの様子をうかがっていたんだから。
そんなに気になるなら話しかけてきなよと言ったがリリーの迷惑になると断固拒否した。あと、今は名前と勉強をしているし、後からでいい、と。
この時、セブルスは意外に頑固なことを知った。


『そうだ、せっかく日本に来たんだし、是非とも日本の夏を体験していってよ』

「あぁ」


ガチガチに緊張していたセブルスをにっこり笑いながら受け入れた我が両親は、わたしたちふたりをいろんな場所に連れ回した。
海水浴場で泳いだり、のんびり避暑地で過ごしたり、有名寺社仏閣巡りをしたり、果ては近所の夏祭りや花火大会にも連れていってもらった。


『……あっという間に夏休みが過ぎていったね』

「……こんなにも忙しなく夏を過ごしたのは初めてだ」

『…楽しかった?』


日本に来たばかりのセブルスは、日本特有の湿気の高さと暑さに辟易していた。
寝込んだりはしなかったが、慣れるまで数日かかった。
……だから、内心、日本に来なければよかった、なんて思われていたらどうしようと何度も考え、何度もセブルスにそう聞いた。


「あぁ、かなりな」


ニヒルに笑って見せた彼に顔が熱くなる。


『よ、良かった』


わたしがそう質問した時には必ず笑って答えてくれる。本当にもうどんどん好きになっていく。


『あ、そうそう、花火しよう』

「花火?あの大きな?」

『ううん、違うよ。手持ち花火っていうんだけど』


夕方に差し掛かった今、セブルスとどうしてもしたかったこと。
両親は今日は会社の飲み会に誘われて、二人して帰りが遅い。
…今こそ、夏休み前に目論んでいた、セブルスと二人きりで花火、をしよう。
庭に出て用意をしていると、セブルスがさりげなく手伝ってくれた。
おかげてサクサク準備が進んだ。流石紳士の国。


「……」

『……』


一通り花火を楽しんだ後、セブルスが気になったという蛇花火に火をつけ二人して見つめる。
煙がスゴい。


「…これは、どう楽しむものなんだ?」

『えーっと、ずっと眺めてると、なんか愉快になってこない?』

「………」

『あっ、ほら!次、線香花火しようか!』


無言になるセブルスに、花火の最後のシメである線香花火を手渡す。
すっかり辺りは暗くなっていて、しゃがんでいた体勢からグッと立ち上がる。
見上げると星が瞬いている。


「…これはさっきのような煙と固まりだけではないだろうな」

『大丈夫!これは日本の手持ち花火のフィナーレだからね』


目の前に座るセブルスの横に移動して、ふたつの線香花火に火をつける。


『これね、長く火花を持たせた方が勝ちなんだよ』

「……勝ったらどうなるんだ?」

『勝ったら……えぇと、…何も考えてなかった…』

「……なら、」

『ん?なにかいい案あるの?』

「僕が勝ったら、名前に告白する」

『え…』

「名前が勝ったら僕が告白する」

『ちょ、それどっちも、』



線香花火がおちた


(好きだ)
(わ、わたしも…)


………

セブルスは二人きりを狙っていたのです
長くなった…
どうしてもセブルスを日本に連れてきたかったのです!

140724


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