お題
□あの夏の面影
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小さい頃は、日が傾くまでおもいっきり外で遊んだものだ。
肌は真っ黒になったし、手足はあちこち傷だらけ、毎日服を汚して家に帰っては母親に叱られたりもした。
けれど高校生になった今、小さい頃のように遊ぶことはなくなった。
一緒に日が暮れるまで遊んだ友達も、中学生になる前くらいから自然と距離ができ、高校生になったら学校さえも別になった。
そして高校生最後の夏。
進学を希望しているわたしは受験勉強をするため図書館にいる。
周りを見回してみたら自分と同じく勉強をする高校生がちらほら見えた。
同じ高校の人はいないようだ。
安堵した瞬間、広い図書館の机ふたつ先に座っていた男子と目が合った。
彼もわたしと周りの人同様、勉強のため参考書やノート、辞典を広げていた。
「あ?」
………?
目があった男子が声を漏らした。
図書館なのに結構大きめな声だったので、わたしは思わず司書が在中しているエリアを見た。
…大丈夫か、これくらいなら。
声を出した男子に見覚えはなかったので、わたしは再び勉強に取り組もうとノートに目線を落とした。
「なぁ、」
顔を上げたらさっき目が合った男子が目の前にいた。
「お前、名前だろ?」
いきなり呼び捨てにされてイラッとしたが、顔に出さないように相手を見据えた。
『はい、そうですが』
「あー良かった、合ってて」
にかっと笑った顔に既視感を覚える。
「もしかして覚えてねぇの?俺のこと」
『……うーん』
「…チッ、秋丸のことは覚えてたくせによ」
秋丸?あの眼鏡の幼なじみを忘れるわけな……そういえば、幼い頃にあの眼鏡と常に一緒にいた、
『元希……?』
「そうだよ!やぁっと思い出したのかよお前!」
マジでふざけんなよ、と続けた元希をじっと見る。
秋丸くんは、最近ばったり本屋で会った。
へらりと笑う彼にものすごく懐かしいなぁと感じたばかりだった。
こんなにも短いスパンで小学生のころ毎日のように遊んだ彼らと再び会えるとは。
はっ、と、視線を感じ、周りを見ると司書がわたしたちを睨んでいた。
「けっ、あのばばあ前も難癖つけてきやがったんだよな」
『コラ、元希止めなよ。つかもう図書館出たほうがいいかも』
真面目に勉強を続けている同じ受験生からの痛い視線からも逃れたい。
「…だったら、近くのファミレス行こうぜ」
さっきと同じにかっとした笑顔を見て思わず笑った。
あの夏の面影
(変わらないね、背丈以外は)
(は?背丈だけかよ変わってんの)
(あとは声かな、聞いてもわかんなかったから)
(そりゃ、成長期だからだろ。名前は変わんねーなー)
(失礼な!超女子高生してますー)
………
幼なじみ、再会。な、お話
秋丸名前忘れてごめん←
140708