お題
□行っちゃヤ、です
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図書委員のわたしは、今日は当番の日だったのでホームルームが終わり次第速やかに図書室に向かう。
テスト週間中は毎日生徒で溢れていたが、終えた今、図書室に来る人は読書家か暇つぶしの人くらいしかいない。
予想通りかなり空いていた図書室に足を踏み入れると程よい空調に安堵した。
長時間いないといけない場所の空調はかなり重要だ。
カウンターに座り、司書の先生が職員会議に行ってくると言い去ったあとは、ひとりで本の貸し借り処理をいつくかこなし、返本を棚に戻し、手持ちぶさたになった今はドラマ化した話題の小説をのんびり読んでいた。
「…、名字さん」
小さな声が至近距離から聞こえてきて心臓が飛び出るほど驚いた。
『っ、びっ、くりした』
「すみません、読書に集中されていたので、気づくまで待とうと思ったのですが」
あまり時間がなくて、と続けたのはとなりのクラスの黒子くんだった。
話したことがあるわけではないが名前は知っている男子のひとりだ。
ふと時計を見たら、わたしが小説を読み出してからもう30分は経とうとしている。
『ごめん、気づかなくて』
「いえ、いいんです。むしろ」
無表情から一変、にっこりと笑って眼福でした、と黒子くんは続けた。
眼福……?
意味を理解して顔に熱が集まるのがわかった。
『………あっ、わたし、棚にこの本返してくる、』
「名字さん」
行っちゃヤ、です
(な、なん)
(まず俺の相手をしてください。実はあなたが図書室に入ってから狙っていたんですから)
(狙って、って)
(言葉通りの意味です)
………
黒子は辛抱強く待ちそうな気がしたので。
てか部活はどうした←
140707
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