だいいち

□秘密の恋心
1ページ/1ページ



終礼が終わって部活に行く人や、さっさと帰る人が行き交う放課後の教室。
そこにひとり、席についたまま微動だにしない人物がいた。


『あれ、黒子くん?どうしたの?…部活は?』



クラスメイトがいなくなった教室には、わたしと黒子くんだけしかいない。



「名字さん」


『わたしね、今週、週番なんだよね。だから戸締まりしないといけないんだー』


「はい、知っています」



暗に早く教室を出てほしい旨を伝えたかったのだか、それを知っていた上での台詞に、頭の中にはハテナマークが増殖した。


『え、と、もしかして何か用事があるとか?』


「はい」



普段無表情の黒子くんが、わたしを見てにっこりと笑った。



『あー…なら、早く用事を済ませて部活行きなよ。バスケ部は厳しいんだよね?』

「はい、そうします」



そう言ったがやはり動かない黒子くんに、さらにハテナマークを増やした。

…週番の仕事は残り2つ。
戸締まりをしてから、教室の鍵と学級日誌を職員室に持っていくだけだ。


「名字さん、教室の鍵は持っていますか?」


『…え?あ、うん。ここに、』


黒子くんに見えるようにポケットから教室の鍵を出した瞬間、


『、え?』



黒子くんがふらりと立ち上がったと思ったら、いつの間にかわたしの右手から鍵を奪っていた。


『え?え、黒子く、』



スッと横をすり抜けた黒子くんは、ガチャン、ガチャンとテンポ良く教室の内側の鍵を閉めた。


「これですぐには誰も入ってこれませんね」



意図が分からなかったが思わず頷いた。

確かに内側の鍵は内側からしか開けられない。外側からかける鍵とは違うものを使っている。
着替え等する際にしか使えないようにする為そうしたらしい。でも籠城できないようにマスターキーはあるらしいが。

内側の鍵を前後どちらも閉めた黒子くんは、目を細めてわたしを見た。


「最近、名字さんは僕を見つけてくれるようになりました」


ゆっくり黒子くんが近づいてくる。自然と足が後ろに退く。


『…えー、そ、そうかな、』


「はじめは、きっとまぐれか何かだと思っていたのですが」


『…あ、うん、きっと、……そうだよ!だって黒子くんを認識できる人は他にもいるわけだし、』


「いいえ、この学校では名字さんだけなんですよ」



背中には教室の壁、前方には青い眼の黒子くんが。


「ねぇ、名字さん?」


普段の無表情と、静かな声色からは想像もできないほどの色香を纏った黒子くんに慌てる。


『く、くろ、黒子くんあの、近い近い近いっ!』


「近いとダメなんですか?」


ふう、とため息を漏らす黒子くんにくらくらする。

わたしの体の左右には、逃がさないように腕で退路を断たれている。所謂壁ドン。


『わ、わた、わたし、日誌を持ってかなきゃいけないのですがっ』


「名字さん」


わたしと黒子くんとの隙間は数センチ。
黒子くんは腕を曲げ、さらにわたしとの距離を詰めてきた。
焦りと照れの熱さでもう顔が爆発しそうだ。


『な、なんなんですか黒子くん!というか、本当、ち、近すぎなんですけどっ…!』


途中から敬語になるほど焦るわたしを見て、フッと笑った黒子くんにドクンと胸が鳴った。


「…可愛い、名前。…ねぇ、僕のこと、好き、ですよね?彼女にしてあげます」






秘密の恋心

(彼にはバレバレでした)




(多分、気づいていないと思っているのは名前だけです)
(え?!まさかクラスメイト全員知って…か、隠しているつもりだったのに!)
(…僕は名前からの熱視線をずっと感じていましたし)
(マジか!うわぁぁあ恥ずかしいぃぃぃてか名前呼びとかもうやめてえええ)
(大丈夫です。公認ですから)
(余計恥ずかしいぃ!!今日だって何も思っていないフリして話しかけていたのにそれさえも!)
(分かって受け答えしていましたよ)
(公開処刑だああああ)
(そんなところも可愛いです)




………

黒子くんに対しての恋心を隠していたけど、バレバレだったのを知ったヒロインちゃん。
何で鍵をとったのかというと、足止めをするためです。
鍵を職員室に返さないと週番の仕事が終わらないので。
わかりにくくてすみません。
てか普通は教室の鍵なんてないですよね\(^O^)/

140328



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ