だいいち

□じんわりと胸に残るは
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昨日、平介が告白されたらしい。
あの超マイペースな平介が。

平介に告白した子を興味本意で見に行った。
なかなかの美人さんだった。

彼女は平介のどこが気に入って、いつ“恋”に変わったんだろう。

最近はずっとそればかり考えている。


『ねぇ鈴木くん』

「何」

『一年生の、平介に告った子、平介のどこに惚れたんだろうね』

「さぁな」

『………』

「………」


会話、しゅーりょー。

鈴木くんは冷たい。
なら


『佐藤くん、佐藤くん』

「なあに名前ちゃん」

『佐藤くんが女だったら、平介に惚れる?』


鈴木くんが飲んでいたペットボトルのお茶を吹き出した。


「名字てめぇ…」

『惚れる?』

「お菓子作れる男は微妙なんじゃない?その上自分より上手いならなおさら」


確かに、と頷きつつ鈴木くんにポケットティッシュを投げた。


「てか名前ちゃん、本人目の前で堂々と聞くものかなぁ、こういう話」


そう、鈴木くんに聞いた時からわたしの膝に平介が頭を乗せて寝ている。所謂膝枕。


『寝てるし、いいかなぁって』


天気の良い日の屋上は格好のサボりの場所だ。
しかし今いるのは屋上だけどサボりではない。
昼休みだから問題ない。


「彼女は言わないんじゃないの、そういうこと」

『そうかな』


うん、と顔を縦に振る佐藤くん。
あ、旋毛がみえた。


「名字は中学からこんなんだし、今さらだろ」

「ふーん」


鈴木くんと佐藤くんは平介が作ったマドレーヌにかぶりついた。


膝に乗る平介の頭を撫でる。
さらさらで羨ましいな。


「あー平介ちょームカつくー!あたしという彼女がいながら美人に告白されちゃってさぁ!」

「…佐藤気持ち悪い」

『もし、佐藤くんが平介の彼女だったら思うこと?』

「そうそれ!よくわかったね!」

「ないな」

『ないわー』

「ええええぇ」


平介の頭から手を退けようとしたら、わたしのじゃない手に阻まれた。
勿論今さっきまで熟睡していた平介の手だ。


「…妬いた?」

『……………ちょっとは』


わたしがそう言ったあと、わたしに背を向ける形で寝転んでいた平介は仰向けになった。
目が合う。

平介はニヤニヤしていた。
頬っぺたをつねってやった。


「おーい、そこの二人、いちゃついてんなよー」

「他所でやれ他所で」

『これいちゃつきに入るの?』

「入る!つか目が合って見つめ合う、とかもうっ!」

「佐藤ウザい」

「はは、佐藤が壊れた」


わたしの膝でヘラリと笑う平介に、ほんのり胸を撫で下ろしたわたしは、やっぱり後輩の美人さんに嫉妬していたみたいだ。





じんわりと胸に残るは

きっと嫉妬が消えた安堵の気持ち



(名前さー、昨日、山本と何喋ってたの)
(山本くん…?あー、あれはわたしが理科室に忘れてったシャーペン届けてくれたの)
(名前そういうとこあるよなー)
(な、何なの?馬鹿にしてるの?!)
(いやー、なにもー?)
(その語尾の延び具合からして馬鹿にしてる……)

(…平介のあれは馬鹿にしてる、っていうより嫉妬してるっていうよね?)
(言うなよ佐藤、またあいつらいちゃつくから)
(あー)





………

再びflatから。
平介お相手。
彼女設定。
もしいたらこんなんかなぁと。

flatの高校羨ましいな。


131219



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