だいいち

□気づいた気持ち
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最近、宮ノ杜さんの様子が頗るおかしい。

周りの同僚らもその様子におろおろしている。


……本人に聞いてみるか…



『宮ノ杜さん、何かあったのですか?』


「ん?……いや、何も」



微妙に言葉に詰まった宮ノ杜さんに思わず笑ってしまった。



「何が可笑しい?」


『え、あ、いえ、ただちょっと』


「言葉に詰まるくらいなら答えるな」



相変わらず高圧的…
なんて思ったが流す。
超気になるから。



『…みんな心配しているのです。最近上の空が多いようですので』


「……みんな、だと?」


『はい。わたしたち秘書はもちろん役員はほぼ皆様気にしてらっしゃいます』



きっぱり言い切ったわたしを一瞥したあと、宮ノ杜さんは深くため息をついた。



「名字、女はどうしてこう、柔らかく小さいのだろうか」


『……はい?それは背のことですか?』


「い、いや、不慮の事故なんだが体をさわってしまったのだ」


『え、まさかセクシャルハラ』


「いや!断じて違う!!」


『存じております』


「………っ!名字!」



顔を真っ赤にしている宮ノ杜さんを見る。



『恋愛相談ですか?』


「なっ!馬鹿者!断じて違う!あんなやつのことなんて」


『“あんなやつのことなんて”』


「っ!!」



大慌てな宮ノ杜さんを見ているのは楽しいのだが、ちょっと胸がムカムカしてきた。
…なぜだろう?



『彼女はどこのお嬢さんですか?』


「使用人だ」


『使用人…』



使用人にこんなに愁いを帯びた目を向けるのだろうか。



『女子は皆、柔らかく小さいものなのですよ。まぁ宮ノ杜さん程の背丈の男性にとっては小さい、も含まれるというわけですけど』


「そうか…」



せっかくの機会だし、冷静さを取り戻したらしい宮ノ杜さんにいたずらを仕掛けてみよう。



『わたしを抱き締めてみますか?多分一般的な身長と体重だと自負しているので平均がわかりますよ』



…まぁ、するはずもないだろうけど、と心で吐き捨てた。

……心配事はノロケだったことを友人に報告しにいこう。







『…、っ、み、宮ノ杜さん?!』


「…なるほど。やつよりは肉付きが良いな」



ふ、と笑う宮ノ杜さんの息がわたしの耳の後ろを掠める。

わたしが背を向けた途端、腕を引かれ宮ノ杜さんに正面から抱きすくめられた。



『な、何、して、』


「お前が抱き締めてみるか、と聞いてきたから実行に移しただけだ。…抱き心地はまぁまぁだな」


『あ、あの』


「……どうした?顔が赤いぞ?」



肩に乗る彼が、にやりと笑った気がした。







気づいた気持ち



(は、離してください)

(ほう、自分から抱き締めてほしいと言ってきたのにな)

(そんなこと言ってな、)

(言ったよな?名前?)

(…っ、うあ、は、はい…)





………


何かはじめに考えていた話と違うことになった……
はじめはただ正を弄って終わるはずだったのに…!
予定は未定です

120827



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