駄文

□clock lock works
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繰り返しの毎日
いつのまにか
迷子になって


寂しくなって



風邪を引いたって
見え見えの嘘ついて
部屋に隠った




変わらないとあきらめて
リズムを刻み続ける秒針を
聞き続けていた

こんな事したって
誰かが助けてくれる訳じゃないのに

やっぱり
あたしは部屋の鍵を
開けることがなくて





何度も何度も
ノックの音を聞いた

聞こえないフリして
みんなに謝った









「おはよう、寝れたか?」

「鍵なんて開けなくても
声は聞こえているだろう?」




優しい声が
扉越しに聞こえる






返事も何もしなくて
ごめんね


だけど
そのノックに酷く安心して
余計に涙が止まらなくなったんだ









「鬼道」

「何だ?」

「…そこいて」

「……あぁ」

「そこいて、ずっと話してて」

「あぁ」




扉越しの会話は
余りに脆くて不安定





「……ワガママで…ごめん」

「それでお前が元気になるなら」

「っっ……」



涙が止まらなくて
溢れる様に流れ出す



「辛い、よっ……」

「だろうな」

「寂しっ……う、っ…
うわああ、ん…っ……」

「あぁ」


「鬼道、は
そこ、いてねっ…っ
いな、くなら、いでっ…」

「……あぁ」




涙が止まらない
止め方もわからない

だからあたしは泣き続ける





こんなの、ただ縛ってるだけなのに
鬼道は何も言わなくて

鬼道の好意を
都合良く使う
そんな自分に苛立ちながら












泣きながら
扉を見た

きっと今は
向こう側には誰もいないだろう







夜の冷えた空気が
部屋を冷たくする
足まで冷えて、すごく寒い






ねぇ
どこでもいいよ

ここから連れ出して





膝を抱えて
呟いた




「王子さまは
いる筈もないのに」







ガシャンッッ






呟いた声を
大きな音が遮った

ガラスの割れた、大きな音







顔を上げた

目の前では
部屋の窓が割れて飛び散っていく
そんな光景が見えて


粉々になったガラスの中には
会いたかった人がいた






「悪い、遅くなった」




久々に見えた姿は
今の無茶で血だらけ





その豪炎寺は
穏やかに優しく笑って
あたしに近づいて涙を拭った







「泣くな」




血だらけのその姿

言いたいこといっぱいあるのに
涙が溢れて何も言えない


だから、





「っ、おか、えりっっ」




泣き笑いで
その唇にキスをして



そのまま
血だらけの体を
ぎゅっと抱き締めたら

嬉しそうに背中に
手が回されて




ぎゅっと、力を込めた

離れないように









「帰って、きて、く、れて
ありが…とっ……」










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