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□三月うさぎは人気者?
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「俺達のせいで、そっちの話を中断させたってのも悪いですから」
「てかあんたら、寿司も食いかけじゃないか!勿体ない」
「え、ええ?」
「ええっと、俺と折原がいたら邪魔でないか?」
「折角なんで、良かったら俺達に詫びくらいさせてください、田中さん」
「そ、そうか?えと、門田とか言ったっけ?あんた義理堅い人なんだな。でもやっぱり邪魔をするのは……」
「邪魔でない邪魔でないよ〜!」
「……なんかあの姉ちゃん、やたら乗り気だな」
「たぶん久しぶりに会ったエサ……もとい臨也さんが」
「ちょい待て遊馬崎!誰が餌だ」
ここまで放心していた俺だが、さすがに聞き捨てならずに突っ込むも。
まぁまぁとはぐらかされて、強引に座席へ引きずり込まれた。
不覚!
「まぁとにかく臨也さんが珍しいツーショットを見せてくれたんで……狩澤さんの悪い病気が再発したんだとでも思ってください」
「なんの病気だよ!俺は帰るの!はーなーしーてー!」
「まぁそう言うな臨也。正直俺は久々にお前と呑めるのも嬉しいぜ」
「え?」
「だな、田中さんがここにいるってことは静雄対策は万全なんだろ?」
「まー一応。静雄は非番だし給料日前だしで、ここには来ない筈だが」
「よっし!なら折原臨也が一緒でも安心して食べられる。貴重な体験だ、俺も呑むぜ!」
「嘘ー!渡草っちが呑んだら誰が運転するのさ」
「知るか!」
「騒がしい奴らばかりですみません。んでも気のいい連中ばかりなんで」
「ええっと、あー門田。とりあえず俺が目上だからって、敬語でなくてもいいぞ?そんな年も変わんねぇし」
「でもアンタは静雄の先輩ですよね?なら流石にタメ口きく訳にはいかないですよ……どうした臨也?早く食えよ」
「そうそう!ていうかフード取ったら?」
「……これでもシズちゃんから隠れてんだから、勘弁してほしいな」
……なんか、予想以上に盛り上がってんだけど。
なんか歓迎されてる?みたいな?
一応田中さんが他に気を逸らさせようと頑張ってくれてるけど、抜け出す隙がないよ。
おかしいな。
「しっかし臨也、お前元気にしてたのか?今年は正月も変な騒ぎが起きなかったし、お前がいないと静かだが気味が悪かったぞ」
「そうっすねー、平和が一番なんですけど、ここ最近はホントに何も起こらなくて調子狂うというか」
「ねーねーイザイザー。折角だから田中さんの隣に座りなよ。トムイザもいいと思うんだよねー」
「狩澤!お前は空気を読め!」
いやいやいや、俺自分が嫌われてるの知ってるからね。
油断なんかしないからね。
こんなの、ありえないって自覚はあるからね。
「…………」
だけど。
「ハーイ、ミンナ仲良シコヨシ、イイコトヨー。セットヲ追加シタラ尚イイヨー」
「ダァーッサイモン!どさくさ紛れて勝手に追加するな!」
だけど。
「ほら、臨也。お前が好きな大トロが来たぞ」
「――――…大トロラブ!俺は、俺はッ」
だけどやっぱり俺は!
「俺はヒトが大好きだッ!」
――久しぶりに人に囲まれたら嬉しいに決まってるじゃないか!
ぱさり
「「「「え」」」」
「――ッ馬鹿!折原隠せ!?」
「人ラブ!俺は人間が好きだ!愛してる!」
歓喜に跳ね上がったフードの中身が、まさかフードを押し退けてにょっきりドタチン達の前に晒されたなんて――嬉しすぎて動転してた俺は気づけなかった。
その数分後、興奮しまくるオタクコンビに撫でくり回され、人間としての尊厳を失い泣き叫ぶ俺がいたとさ。
めでたくない、めでたくない。
ほんっとうに!めでたくない!
〜三月うさや〜
【三月うさぎは人気者?】
「……俺が折原と一緒にいた理由は、これで全部分かってもらえたかと思うが、どうだ?」
「いや、なんか。静雄といい臨也といい、俺の同窓生が次々とすみません」
「いやー俺こそ、あんたを巻き込んじまった。悪かった。静雄にこれは見せられん、その一心だったんだけどよ」
「分かります、分かります」
妙に意気投合した苦労人コンビ、もとい保護者コンビに俺が泣きついたのは、言うまでもない。
「ドタチーン!田中さぁん!たすっ助けてぇぇええええ!」
―――人気があるのも考えものだ!
END