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□罰ゲームを貴方に
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※Are your answer ? の続き。
※蘭臨(蘭→臨)






「五番の『全部』ってところかな?」

 僅かな沈黙の後、臨也は歌うように答えた。
 語尾を上げて尋ねるような言葉なれど、小首をかしげつつも、その表情は笑みを浮かべている。
酷く楽しげな眼が蘭を捉える。


「……正解」


 その眼から顔を逸らしつつ、蘭は渋々といった様子で答えた。畜生、そう吐き捨て煙草を取り出す姿は彼の苛立ちを如実に示している。
 対する情報屋は極上の笑顔を浮かべる。

「なんで当たんだよ。つーか五番ってなんだ五ってよ。普通は四番の全部だろーが!」

「ひっかけが大好きな君なら、四番目は何か別なのを用意してそうだし。まぁ、そもそも番外の答えを準備してるあたり、本当に意地悪だよねえ」

 思いのほか蘭が憤慨したからか、臨也は満足げだ。くつくつと笑う様は憎たらしい事この上ない。

「何が外したくなるだ!しっかり当てやがって」

「伊達に愛してはいないよ」

「糞ヤローが!」

「というか君が迂闊なだけ。俺相手に選択肢をくれるなんて、案外優しいねぇ?」

「うっせぇ。当てられたら意味ないんだよ!」

「それはそれは、ご期待に添えなくて悪かったねぇ。もしかして俺を誘導したくて選択式にしたのかな?だとしたら俺は、一体何番と答えなきゃならなかったのか……君は俺に、なんと答えて欲しかったのかな?」

「へ!」

 蘭は鼻で笑いながらも、くわえていた煙草を踏み潰し臨也に向き直る。
 その表情はどこか愉快そうに歪んでいた。

「なーらよ、テメェが外してでも答えたかったのは何番なんだ?」

 こちらも負けじと問い返す。
 すると互いの間から、ごく自然に笑みが零れた。
 月明かりの下、声を出して嗤い合う男達。
 それは大層愉しげで、

「怖い怖い。ここで迂闊に返したら、さっきのクイズに答えた事になるのかな?だとしたら、クイズに外れる俺は、一体どんな罰ゲームをうけるのか」

 尋ねたというよりは独り言のようである囁きに、蘭は一瞬瞳を煌めかせる。

「クイズの時間です!折原臨也君は、俺からどんな罰ゲームを受けるのでしょーか?」

 そして唐突に、この男はいつでも唐突に始めるのだ。自分だけの、愉快な時間を。

「一、壊す」

「二、殺す」

「三、犯す」

「へえ?」

 少し意外そうに眼を見開きながらも、やはり臨也は笑みを絶やさなかった。
 どころか、ますます楽しそうに口を開く。

「そっちの趣味もあったんだ?」

「んなわけねーだろ」

「ハハハッ君って面白いね。予想以上だ」

「テメェは予想以上に性悪だ」

「かもね」

 適当にかえし、臨也は蘭から背を向ける。
 そしてそのまま、トントンと階段を下り始めた。

「あん?待てよこら」

「なーんだい?」

「答え聞いてねーぞ」

 それは先程臨也が答えなかった選択肢の事か、あるいは今の罰ゲームの選択肢を指すのか。あるいはその両方か。
 曖昧な問い掛けに対し、臨也はあくまで背を向けたままで思案する。

「うーん」

そして、

「ないしょ」

 クルリと振り返った表情は、子供じみた笑顔。

「こんなに明るい月夜だ。わざわざ全てを明るみに出さなくってもいいだろう?」

 手を広げ、天を仰ぎ、肩を竦める。
 そんな一連の動作は全てが流暢で爽やかで芝居がかっており、どこまでも、愉しげだ。

「薄ら暗い秘密がないと、面白くないからね」

「……」

 サングラスの奥、実は目を見開いている蘭の事など顧みず、臨也は再び階段を下り始めた。
 トントンとトントンと。
 トントンとトントンと。


 一人分の靴音は、やがて月明かりの夜の闇に飲み込まれ、残ったのは蘭唯一人きり。

「……ブッブー。時間切れでえっす」

 口調はふざけながらも淡々と蘭は告げた。

「答えは五番の全部、でーす」

 ずりずりと、踵を擦りながら一歩を踏み出す。

「クイズに答えなかった折原君にはぁ」

 ずりずりと、トントンと。

「罰ゲームです」

 トントンと、トントンと。
 トントンと、トントンと。

「俺が壊して、殺して、犯しまくってやる」

 階段を、トントンと。

「俺で、狂い殺してやる」

 トントンと、下る。

「俺だけを――ように」

下る、下る。

「ひとまずはぁ、その歪んだ人間愛とやらから壊してやる」

 折原臨也を追って。





 今宵の月は、げに美しい。



END






言い訳のターン!
蘭→臨です。
蘭君は前回、臨也から三番を答えてほしかったんだよね。告白したんですよね、一応。
それが流された上に予想外の解答で、ご機嫌ななめ。
でも自分を深く理解してる臨也が嬉しいやら腹立だしいやら。
殺したいのは「自分を人間の一人としか見なさない折原臨也。人間全体を愛している折原臨也」です。
単純に、自分だけを見ろ、とグラサンの下でギラギラ眼を光らせて思っている模様。
私が書くとなんて残念な思春期の青少年になるのでしょう(苦笑)

でも激しく書きやすかったです。
読んでくださった方々ありがとうございます!


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