drrr 長編

□bugdata
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なんだい、ここに来ちまったのか。


ちゃんと見たのか?
このデータはバグだって表示があったろう。


と言っても、ここはバグではないんだがな


意味が解らないって顔してるね。
だがスマン。
ここの事を説明する前に、ここに来てしまったプレイヤーには言わなければならない台詞がある。




ハッーハッハッ!騙されか?おめでとう!!
勇者が魔王を倒しました。
ゲームクリア!
ハッピーエンドだ!



おっとおっと!怒るなって。
仕方がないだろ、決まりなんだから。



で、実際はどうだったんだ?
君は折原が勇者で、静雄が魔王だと気付いていたかい?


制作側の悪趣味な罠を見破り、まったく驚かなかったというプレイヤーは凄い!
そして悪かった!
失礼な台詞を言っちまった!
御免なさい
まだまだ人間について理解が足りなかった。
貴方がここに来たのは何かの間違いでした!
至急、エンディングへお進みください




……と、これくらい謝っとけば十分だろう。


ではそうでなかったプレイヤーは、ようこそ!


ここは――云わばゲームエンディングの隙間だ。公式の、な。


このゲームの展開に納得できなかったプレイヤーが流れ着く、公式に非公式な特設ステージさ。



ぶっちゃけてしまえば、ゲーム制作者の盛大な言い訳のターンだ。
ゲーム展開のあれこれを弁解して、プレイヤーである君に納得してもらおうという……浅はかな試みだな。
俺に代弁させるとか本気で止めてほしいぞ。
もっとも……


俺が選んだ勇者がどうなるかは俺にも責任あるんでな、憎まれ役も買ってやろう。





さて、では制作者の言い訳のターンだ!


と言ってもチキンな奴だから、全て俺が解説するんだがな。



まずは大概のプレイヤーを誤解させた、予告編から行ってみよう。
あ、予告編を見てないって人は軽く流してくれ。


よく予告と本編は全然違う、予告に騙されたって話があるね。
制作者はそれを意識してやってみたわけだ。
折原が魔王、静雄が勇者だと思い込ませるために。
基本的には、ゲーム中のそれらしい台詞と制作者側のモノローグを編集して、これからゲームを始めようっていう人を上手く誘導したわけだ。

……やっぱりこっちサイド嫌だな。
俺まで悪者みたいだ。
まぁその話は後で本人と。







昔から自分の化け物じみた力が嫌いだった。
俺の力は、あまりに人間離れしていて。
『暴力』でしかなくて。

結局は大事な人間さえも傷つけた。

だから、だから俺は――――








『勇者がこちらに寝返ったというのは、本当か?』



それは歪んだ物語。



「彼はこちら側……モンスター側が相応しい」



人間とモンスターが対立する世界。



「一緒に、モンスターと人間が仲良く暮らせる世界を創ろう」



ありえない理想を抱きながら。



「君は想像できる?人間に生まれ落ちたくせに、人間を裏切ろうっていう愚かな選択。その気持ちを」



――勇者は人間を裏切った。





まずは冒頭。
『暴力』というキーワードで視点を静雄だとイメージさせた上で、勇者が人間を裏切ったことを説明している。
この時点で静雄=勇者だと印象付けている。




「……知ってる?魔王がモンスターを嫌ってるのは、人間に肩入れしてるからって噂」



モンスターを忌み嫌う魔王。



「ただ、あまりに敵が多すぎて城の中でも孤立している、そんな寂しい存在さ」



魔王は孤独だった。



「そして今、城にはもう一人孤独な存在。勇者がいる」



勇者も孤独だった。



「俺はね、人間が好きで好きで堪らないのさ!」



――魔王は人間を愛した。







で、今度は魔王の説明。
口調からして台詞は折原だと解るだろう。
人間を愛してるだとか、いかにもな発言だ。
それに【魔王は人間を愛した】ってモノローグを入れたせいで、折原=魔王という認識になる。

予告編の以降は多少台詞を弄ってはいるが、ほぼ二人の出逢いシーンだ。
人間好きの魔王と闇に堕ちた勇者、二人の恋を煽るようなモノローグ付きでな。
そこははしょるが、こんな感じで予告編は終わりだ。

台詞は確かにゲームで使われたものだが、順番入れ換えて勝手な説明を入れたから、もう騙す気満々の予告だったな。

予告を観てゲームを始めた人は、本当に運が無かった。
不服だが、制作者の代わりに謝るよ。
ごめんなさい。




まぁゲーム本編も以下同文なんだが、とにかく静雄=勇者、折原=魔王のイメージ付けのための罠があちこちにある。
だが一応言い逃れをするなら、静雄は一度も自分の事を勇者だとは言っていない。
折原もだ。
例外を言うなら、【savedata14】の冒頭か。
【俺は勇者、あいつは……】ってやつな。
だがそれもな、よくよく見てくれ。
いつも静雄のモノローグから始まるが、この一言はそれの前にあるだろ?
紛らわしいんだが、これは折原のモノローグだ。

正直これは、制作側でもミスったと思ってる。
違う入れ方をする予定だったんだが、データの都合上、あそこに盛り込んでしまったらしい。

これは後々、必ず制作者に土下座させるから。
訴えるのだけはやめてやってくれ。
所詮はチョコ菓子だ。焦ると溶けてなくなってしまう。


まーこれで納得できなかった人は、良ければもう一度プレイしてみてくれ。
思い込みをなくしてみると、意外とすんなりプレイできるかもしれない。




ピッ






よーし納得した!勇者が魔王を倒した!と納得できたプレイヤーは、是非にエンディングに進んで……






ピッ……






なんて言って、納得できるわけないって?






ピッ……ビー!



何てったって




Error!

Error!







ラスボスが納得してないみたいだからな。




ピッ




さて君はどうする?
どうやら本当にバグが発生したみたいだ。




ここで戻れば、RPGらしくゲームクリアできる。




でもこの展開に納得できないのなら……




ピッ……




特別にパスワードなしで隠しログを覗けるようにしてあげよう。




だってその方が、面白い事になりそうだからね。



ログを辿って、そこから先をどうするかは……君次第だ。







さぁいいかい?





では




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