BASARA

□恋をさせたい兄(腐男子)と恋をしない妹(♂)1
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【注意!】
このシリーズはBSR48×元就の妄想を目的とした慶次主人公の転生現パロです。
しかも元就のみ女体化しております。
慶次は元就♀に恋をさせたいがために試行錯誤した結果、目覚めて腐男子化しております。
各キャラそれぞれについて戦国・現代の両方で元就と絡ませて、全元就受けを布教するアホな話ですので、BL,GL,NLなんでも節操なしに妄想します。
さらには作中で慶次と腐なモブ達との会話の中で、元就受以外のあらゆるCPも(話題程度の軽い扱いですが、ダテサナや小政〜果てはどマイナーやリバまで)登場します。ちなみに腐の勝手な妄想であって、作中に出てくる彼等は特にCP扱いはしません(公式の夫婦などは別)。
それと並行して、前田家+元就の家族ほのぼのコメディとシリアス内容も含みます。あと腐モブ(主にアニメ版のOPで踊っているようなモブの皆さんの生まれ変わり)も出てきます。

このようになんでもアリの俺得話です。本気でなんでもアリの方以外は読まれないことをおすすめします。
ちなみに一話目は日常話がメインです。
大丈夫でしょうか?

オッケーという武士の方は、どうぞ飽きるまでお付き合いいただけましたら幸いです。






〜恋をさせたい兄と恋をしない妹〜



俺の朝は二回やって来る。

一回目は夢見心地のまま。
それはそれは早い時間帯、まだ太陽が昇る前の――俺からしてみれば朝っていうより夜といった方がしっくりくる早朝に訪れる。
そいつは寝ている俺の枕元をズンズン歩いて、寒かろうと関係なくカーテンと窓を開け放つ。多少音がしたって目は覚まさないが外気が入ってくれば眠りも浅くなる。
そしてしばらく経って日の光が差し込んでくれば流石に覚醒する。
けれど決定的な刺激にはいたらなくて俺は夢うつつのまま、いっつもおぼろげな世界の中にそいつを見る。

はじめは薄暗い視界に浮かぶ細見のシルエット。
ほっそりとした首から鹿のようにしなやかな脚まで歪みなく、しゃんと前を向いている姿がほのかな闇の中に浮かび上がる。
徐々に明るくなるにつけ、淡い光に照らされて影絵のようだった輪郭線に陰影が生まれた。
朝日が近づけば近づく程にシルエットは人となっていく。
その人が立つ窓辺のカーテンが淡い緑色をしているから、布越しの光も背景も淡い緑色に見えた。だからその人は翠色の陽光を受けている。そう見えた。
明け放たれた窓から風か、温度差か、窓の外の空気が入ってきてその人の髪を揺らす。
始めは黒く見えた細い髪も、光に照らされて亜麻色に輝いた。
それが酷く綺麗で、ハッとするくらいには懐かしくてもどかしい。
こうして明るさを増す視界に意識も覚醒しだし、けれど眩しくて瞼を開けていられないから俺の視界はぼやけたままで。
瞬きで狭まった視界はその人を額縁の外に追い出してしまう。
俺はそれが嫌でぐっと瞼を持ち上げるのだが、光を直視は出来なくて。
結局まぶしさに眼を細めてしまって、おぼろげだった世界はあっけなく溶けてしまう。
そうして瞼を閉じればすぐに睡魔が俺を引き寄せて、俺は再び夢の中へもぐりこんでいった。
その夢と現の狭間の、ほんのわずかな瞼のすき間から映る世界には、お天道様の光を一身に受けて祈る――ただ一心に祈るその人の横顔だけが、見えていた。



……そんでまぁ、気持ちよく二度寝した先に恐ろしき目覚めが待ってるんだよな。

「……――慶次!」

……なにやら騒々しい。
きっとまた俺を起こしにまつ姉ちゃんが来たんだな。
うわー嫌だなぁ。

「慶次!いつまで寝ているのです」

来た、来た来た来た。
やっぱりまつ姉ちゃんが起こしに来たんだ。
毎朝ごめんよ、まつ姉ちゃん。
けれど変に一度目が覚めているから、今の時間はいい具合に眠いんだ。
もうちょっと、あと少しだけ寝たい。

「あと五分……」

願望のままに呟いて、涎なんて垂らしたまま寝返りをうった。その、次の瞬間。

「うわぁ!?」

ぶわっと音がしたと思ったら、いきなり世界が回りだした。
布団をはぎ取られたらしい。
下に敷いていたシーツも布団と一緒にはぎ取られたから、布団とシーツに挟まれながら俺もぐるんぐるんところげ回った。
今日もまつ姉ちゃんのこっわーいアラーム機能は炸裂だ。
俺のでっかい体をいいように扱うんだから、まつ姉ちゃんの怪力は舐めちゃいけない。

「いい加減にしなさい!」
「うう……いいじゃん休みなんだし」

寝ぼけている所で脳みそが揺り動かされたから、正直酔った。
これは三度寝するしかない。という訳で寝なおそう。

「お馬鹿!今日から学校が始まるのを忘れたのですか」
「え、嘘」

再度布団にくるまる俺にまつ姉ちゃんは予想外の言葉を放った。おかしいな、今日から新学期だっけ?
それでも正直眠い。
俺の睡眠欲を甘くみてはいけない。学校があろうがなかろうが、成長期の男子の朝は眠いんだ。
という訳でさよなら学校。ただいま惰眠。
まつ姉ちゃんに謝りながら、枕に顔をうずめかけ。

「貴方が起きなければ元就もご飯が食べられないのですよ!」

モトナリ、その名前を聞いて飛び上がった。
一気に目が覚める。

「やべッ!」

まったく役に立たない目覚まし時計で時間を確認し、青ざめた。
昨日まで春休みだったから体内時計は普段以上にネジがゆるみまくっていたらしい。
ガッと起き上がるとまつ姉ちゃんがいるのも構わず、急いで制服に着替える。
咄嗟に慣れ親しんだ学ランを手に取ってしまい、慌てて真新しいブレザーに取り換えた。
「今日から高校生だというのに、本当にだらしがない」

バタバタと支度を始めた俺にまつ姉ちゃんはため息をついた。
俺の二回目の朝はこんな具合に賑やかだ。


◇◇◇

俺と元就は今日から高校生になる。
といっても二人そろって中高一貫校に通っていたため、今までと大きな違いはない。
高等部には外部からの生徒も入ってくるから楽しみではあるが、中等部からの同級生が全員そろっているので気楽なものだった。
その気安さから今日が入学式だって事をすっかり忘れてしまったんだけれど、過ぎてしまった事は仕方がない。
幸い今日は式とオリエンテーションだけだから、特に荷物なんていらない。
すごく軽いリョックを背負い、ろくに準備もせずに階段を駆け下りた。
別に授業があっても教科書は机に入れっぱなしが常なので、ぶっちゃけ大差ないんだけどね。
そんでトイレだけ済ませたら洗面所に寄らずに廊下を駆けた。

「コラ慶次!また顔も洗わずに!」
「食ってから洗うよ〜」

まつ姉ちゃんの小言も聞き流し、奥の仏間へ直行する。
流石に仏壇の前で騒ぐわけにはいかないので、息を整えてから襖を開けた。
そして襖の先には、先客。
あたたかな日差しを受けながら仏壇の前で手を合わせるその人に、俺は一瞬息を飲んだ。
普段より穏やかな表情で祈る姿は、毎朝目にする朝の光景に重なって。
たぶん、うん、見とれてしまった。

「おはよう元就」

いけねえや、また寝ぼけてるのかと思った。
毎日顔を合わせているというのに、たまに不意打ちをうけるから困ったもんだ。美形ってのは罪だねえ。
内心の葛藤を抑えて挨拶をした俺を無情に無言のまま迎えたのは、毎朝俺の部屋に不法侵入する日輪の申し子様だ。
仏様のご飯を持ってきたらしい元就は、チラリと俺に一瞥をくれると仏前に軽く頭を下げて俺に場所を譲ってくれた。

「サンキュッ」
「フン……仏前でくらいは身なりを整えぬか」

俺がお礼を言えば、元就は軽く鼻を鳴らした後に文句を言った。
もっともなので言い返せない。

「ごめんごめん」

今の俺はといえばシャツ全開、髪は結いもせずにボサボサのまま。実はまだベルトも締めていない。流石に自分でもどうかと思った。
片や元就はすっかり身支度も整えて、新しい制服を綺麗に着こなしているから尚更だ。
このきっちりとした姿を見て毎回思うことだが、どうして休みボケしないのか不思議。

「挨拶が済んだら即、参れ」
「はーい」

普通はさらに説教をされる所だが今はただでさえ時間がない。元就も諦めてくれた。
あー助かったなんて勝手な事を思いながら、気持ち身なりを整えてから正座した。

「さてと」

どんなに時間に余裕がなくても、朝の挨拶だけは欠かせない。
仏壇に置かれた二組の写真を交互に見ながら、おはようと手を合わせた。



台所に戻れば食卓の上に美味しそうなご飯と、それを前にしておあずけ状態の利が待っていた。

「待っていたぞ慶次!」
「おう利!おはよう」

利は今にも涎が垂れ落ちそうにしている。

「まったく慶次ときたら、新学期早々に遅刻する気ですか」
まつ姉ちゃんが説教をしながら俺にご飯をよそってくれた。
俺の涎も垂れそう。

「まったくだ、まつの飯が冷めてしまったらどうするんだ」
「まぁ犬千代さまったら」

ポッと顔を赤らめたまつ姉ちゃんと鼻の下を伸ばす利。
おしどり夫婦はいつまで経っても暑くていいねえ。

「問題が違うだろうが」

ぼそっと呆れたように呟く元就も席について、全員が揃った。

「いただきまーす」

異口同音、みんな揃っていただきますと唱えた。口は悪いが行儀のいい元就も一緒に(すっごい小さい声だけど)言った。
前田家では一家全員が揃ってから朝食が始まる。
学校通いで時間にリミットがある子供二人が先に食べてもいいんだけど、俺達は出来るだけ全員で食事をするようにしていた。
それに俺と利は毎食、どちらがより多くまつ姉ちゃんの飯を食えるか勝負していた。
単純に奪い合う勢いで食べるからなんだけど、昔からこの勝負はやめられないよ。
という訳で俺と利は箸を取ると同時に、勢いよく飯をかっ込んだ。
大根と根菜の煮物にわかめの味噌汁、めかぶときゅうりの酢の物。昨日のポテトサラダの残り(まつ姉ちゃんが意図的に残してた)を揚げたコロッケがとにかく美味い。
隣では利が俺の狙っていたブリの照り焼きを頭から食っている。
負けじと俺もブリのしっぽに箸を伸ばした。

「阿呆どもが、少しは味わって食わぬか」

そんな俺達を元就は冷めた眼で見て――すらいない。皿の上の卵焼きを一口大に切るのに夢中になっていた。
見向きもせずに冷たい事を言わないでほしいな。
その通りだから文句は言えないけど。
ちなみに今日は卵をふわふわに泡立ててから焼いた、スフレみたいにふわっふわの甘い卵焼き。
俺の家では卵焼きは日替わりで味や焼き方が変わる。
個人的には甘くない厚手のだし巻き卵が一番好きだが、この甘い卵焼きは元就の好物だ。
満足のいく大きさに切れた卵焼きを、ほふほふっと頬張る元就の頬がゆるんでいる。
わりと大きく口の中に詰め込んでいるから物理的に頬は膨らんでいるんだけど、それを言うのは野暮ってもんだ。
ちなみに前にハムスターみたいだなって言ったら、ガチで半殺しの目に遭った。
まさか自転車の車輪を掴んで振り回してくるとは思わなかった。
やっぱりタイヤみたいな輪っかが回しやすいんだなと妙に納得したけど。

「おい貴様、よそ見している暇があるならさっさと食え。遅刻する気か」
「おっといけねぇや」

うっかりしていたら時間が迫っていた。ついでに食いかけのコロッケを利に食われたし。
再び飯をがっつきだした俺を元就は今度こそ冷たい眼で睨んでくる。
元就は一日24時間、むしろ一年を通して俺に対して厳しいのだが、特に朝は当たりが強い。
低血圧で機嫌が悪いって訳でなく、単純に寝坊すけな俺のせいでいつも朝食が遅くなるからだ。
それこそ元就は日の出と共に動き出す早起きさんだから、まつ姉ちゃんが朝食を作り終えた時点ですぐに食べられる。
ただ元就は家長より先に食べるべきでないと言って、利が食事を始めるまで食べないから必然的に俺が起きるまで待つ羽目になるんだ。俺も利もまつ姉ちゃんも四人でご飯が食べられるから嬉しいんだけど、元就だけはちょっと迷惑そう。
ごめんねと心の中で謝りつつ、利からもぎ取った筋子を頬張った。
でも元はといえば元就が毎朝俺の部屋で日光浴をするから俺は二度寝をしちゃうのであって、ある意味俺の寝坊は元就のせいなんだ。
だから自業自得だよって言いたい。
前にそう言ったら、真冬なのに簀巻きにされて寒い外に転がされた事があるから絶対に言わないけれど。
そんな訳で元就はいつも、朝が遅い俺を虫けらでも見るような眼で見下ろしてくる。
俺の方がずっと背は高いから、物理的には俺を見上げている筈なのに何故が俺には元就が見下ろしてくるように見えた。

それは見下ろしてるんじゃなくて見下されてるんだ、とか言わないでくれよな。


「ご馳走様でした!」

片や食後のお白湯(じじくさいよね)を優雅に飲みながら、片や食べ終わると同時に洗面所へ走り出しながら、それでも俺達二人は同時に学校へ行く準備を始めた。

「俺達も式には行くからなー」

まつ姉ちゃんにほっぺに付いた米粒を取ってもらいながら、利はのんびりと言った。

「……別に高等部に上がっただけ故、わざわざ見に来なくともよい」

元就は無表情のまま、でもちょっと困った様子で言ったのだが利に通じる訳はない。

「そんな訳にはいかないぞ!可愛い元就と慶次の晴れ姿を逃してたまるもんか」
「そうですよ」
「ビデオ持っていこうなーまつ」
「ええ。お弁当も持って行きましょうね犬千代様」

運動会でないんだから、とかツッコんでも無駄だろう。来る気満々の二人に元就も渋い顔をするしかない。
宥めるように元就の肩を叩いて玄関に向かった。
靴を履く前に元就に跳び蹴りをくらって、理不尽だと叫んだけど無視された。
こんなの、絶対おかしいよ。

「いってきます!」
「いってきます」

いってらっしゃい!大きな声に背中を押されて、俺と元就は学校へと向かった。

  
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