螺旋の聖譚曲

□最終楽章 『ある街中の結婚式にて』
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舞台はオーストリア。

音楽家や音楽士達はこぞってオーストリア帝国にあるウィーンに先を急いだ。

道端で出会う音楽の道を目指す同士は皆、パレードのように大通りを進んでいった。

音楽。それは音を紡ぎ、この世のものを独特の音階の世界に写し出し、その音楽によって人々を時に感動させ、時に勇気をもたらすもの。

音楽家はそれの世界を操れるように必死に努力し、時には天命として生きていく者。

そして

その世界を操り、"聞く"音楽を発展させ、"見える""感じる""聞こえる"存在へと誘う技術者となる者。
それが『音楽士』。


音楽士はひそかに歴史で活躍を見せていた。
音楽家は戦争で音楽を使い戦う事はできない。
唯一できるのは戦争へ行く人々の気を鼓舞をするだけだ。

しかし音楽士は違う。

音楽士は"音を実現"させる力をもつ。それは資質によって導かれる物で、努力でそれは達成される事はない。
そしてそんな"実現"させる資質をもった彼らは戦で音を操り、敵を攻撃できる。

それが猛き獅子を詠うモノならば、音は荒ぶる獅子を実現させ、敵を粉々に噛み砕くだろう。
それが眠りを誘う人魚を詠うモノならば、音は優艶な人魚を実現させ、敵を深い眠りに落とすだろう。

有能で貴重な存在である彼らは国民から敬われ、同時に王や軍からも貴族以上の寵愛を受けた。その為、当時ヨーロッパでは『音楽士』は貴族にも値する立派な職業、武業であった。

以前までいがみ合っていた音楽士の始祖であるブラウバルトとロートバルトの仲が
この一年で仲良くなり、最近ではまた一つの一族に戻ろうという動きすら見えてきた。





“音楽が幸せを運んできた”





人々は皆そう言って喜んだ。
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