螺旋の聖譚曲
□第参楽章 『ある男の狂想曲』
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オーストリアとプロイセンの国境にもっとも近い小さな村、『エール村』についたヴォルフ達は
まず村人に宿屋はあるか、また、今は使われていない小屋でもかまわないと聞いてみた。
それを聞いた村人は快く頷いて
「宿屋はありませんが、私の家でよければどうぞ。」
と言ってくれた。
その村人はコリンと言う人で、息子と娘を父親なしで育てているらしく、部屋が余っているのだと言う。
感謝をつけで馬車をその家につけると、元気よく窓から少女が降りてきた。
「お母さん!その人だぁれ?」
と、同じ窓からよく似た少年が同じように飛び降りて現れる
「いきなり誰は失礼だよルシア。」
「あら、お兄ちゃんこそ挨拶しなかったくせに。」
「僕はお前に注意しに来たんだから仕方ないだろ。」
いがみ合う二人を見てクスクスと笑うヴォルフ達に対し母であるコリンは恥ずかしそうに"ごめんなさいね。遊び盛りなもので"と頭を下げた。
ようやく気がすんだのか少年が向き直る。
「はじめまして!僕、ロッド・アイルダルクと言います!こっちはルシア!」
「はじめまして!さっきはいきなりでごめんなさいっ!」
可愛らしい二人の挨拶に頬を緩めてアンナはよろしくね、と笑った。
ここ数日でアンナが子供好きなのはわかっていたので、ヴォルフは黙って微笑んでいた。
「さぁお客さんあがってくださいな!今からじゃがいものスープを作りますので!」
「お母さんのスープは激烈品なんだよ!」
「それをいうなら絶品でしょルシア。」
元気のいい相手らの駆け引きにクスクス、と再びヴォルフ達は笑った。