螺旋の聖譚曲

□第零楽章 『とある街中のパレードにて』
2ページ/9ページ




舞台はドイツ、ブレーメン。
当時はまだドイツではなくプロイセン王国だった頃。
一般の音楽家達はこぞってオーストリア帝国にあるウィーンに行く一方で
とある特別な者達は皆プロイセンにあるブレーメンに先を急いだ。

「お前はどこに行くんだ?」
「僕はウィーンさ。君は?」
「ブレーメンへ。」

道端で出会う音楽の道を目指す同士はそう呼び掛けあい、真逆である道を進んでいった。

音楽。それは音を紡ぎ、この世のものを独特の音階の世界に写し出し、その音楽によって人々を時に感動させ、時に勇気をもたらすもの。

ウィーンを目指す者―――――音楽家はそれの世界を操れるように必死に努力し、時には天命として生きていく者。

そして

ブレーメンを目指す者―――――その世界を操り、"聞く"音楽を発展させ、"見える""感じる""聞こえる"存在へと誘う技術者となる者。
それが『音楽士』。


音楽士はひそかに歴史で活躍を見せていた。
音楽家は戦争で音楽を使い戦う事はできない。
唯一できるのは戦争へ行く人々の気を鼓舞をするだけだ。

しかし音楽士は違う。

音楽士は"音を実現"させる力をもつ。
それは資質によって導かれる物で、努力でそれは達成される事はない。

そしてそんな"実現"させる資質をもった彼らは戦で音を操り、敵を攻撃できる。

それが猛き獅子を詠うモノならば、
音は荒ぶる獅子を実現させ、敵を粉々に噛み砕くだろう。

それが眠りを誘う人魚を詠うモノならば、
音は優艶な人魚を実現させ、敵を深い眠りに落とすだろう。

有能で貴重な存在である彼らは国民から敬われ、同時に王や軍からも貴族以上の寵愛を受けた。
その為、当時ヨーロッパでは『音楽士』は貴族にも値する立派な職業、武業であった。

そしてそんな中。一つの物語が紡ぎだされる。

全ては『音楽』によって導かれた必然ともいえる小さな事柄から始まる。

それがこのブレーメンが誇る音楽隊の称号『ブレーメンの音楽隊』をもつ

『風の妖精(シルフィード)』の公演によって起きた出来事だった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ