螺旋の聖譚曲

□第八楽章 『雷撃は猫と翔る』
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第八楽章 『雷撃は猫と翔る』

風が叩きつけるように馬車をゆらす。

時折間近で雷が落ちる音がしたがそんな事は気にしていられなかった。


ルシアは時折気になるように窓に目を向けていたが、
激しい雨がやがて降ってくるとそのうち興味がなくなり再び目を閉じた。


耳の中にはヴォルフとフランベルジュのバイオリンとチェロの調和の取れた音楽が入ってくる。

『幸せの鳥と聖なる驢馬の守護協奏曲』。

ブラウバルトとヴァイルシュタインしか成せない技。

そのお陰でか馬車は竜巻に襲われる事なくギリギリのラインを走ることができた。

アンナもまたかつてないほどの労力で馬を巧みに操っていた。
―――否。

「頑張って…!お願い…もう少しだから…!!」

アンナの呼び掛けに答えるように二頭の馬は駆けていた。


と、前に突然影が現れる。

「!!」

手綱を引き、急ブレーキをかける。

後ろでバタバタと倒れた音がしたが音楽が止まっていない事から双子が馬車を転がったのだとわかった。

内心で謝りながらアンナは飛び出してきた影を見る。

「…大丈夫ですか?!」

それは頭から血を流した男性をその二回りも小さな体格をした少年が運んでいる様子だった。
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