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□『佐相小説2』
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―――
「あついー」
机に両手を投げ出して突っ伏す青い髪を見ながら、煙を思いっ切り吐き出す。暑いのはこちらも一緒なので、わざわざ言わなくてもいいと伝わらないだらうか。
厨房よりは幾分涼しいが、長袖長ズボンという姿は夏にはかなり厳しい。ホールの奴らが羨ましい。出たくは無いが。
「さとーくん、顔に全部でてるよー。」
「そーかよ。」
蝉の大合唱に苛ついててポーカーフェイスを保てていなかったらしい。失敗した。
「ちっ」
「うわ、ひどー。そーいやさとーくん、さ。就職に希望とかあるの?」
「はぁ?」
「だって2年後には社会人だよー俺達。」
暑さにやられたのか、唐突に聞いてくる。
「お前は、どうなんだよ」
つい、訊いてしまう。東京に出たいのか、もしくは海外か、案外公務員かもしれない。
「んー、俺は古書堂とか開きたいなー。」
「ほー、なんかいいな。そゆの」
コイツが初めて自分の事を話した。やっぱ夏にやられてた。でも、話してくれた事が嬉しい。そう思う俺もかなり、暑さにやられてる。
「さとーくんはどうなのさー。」
「俺は取りあえず就職して、金貯まったら2人で住みたいな。」
「轟さんとー?デレちゃってー」
ニヤニヤと下から覗いてくる相馬の瞳を見つめ、耳元に口を近づける。不思議そうに見つめてくる相馬を無視し、言葉を紡ぐ。
「お前と、俺、2人で」
顔を離し、もう一度相馬を見つめる。
頬が熱い。だけど、相馬も夏の暑さとは別で耳まで真っ赤に染め上げている。
「返事は、ないのか?」
「あ、その…、えとぉ…」
どもる相馬。を見つめる俺。
「あの、…待ってる」
か細い声で伝えられた言葉に、口元が緩む。
「おう、待ってろ。」
相馬が、頷いた。

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