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□『相妃小説2』
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雪が静かに窓の外を駆け抜け、地に落ちていく。それは、元々積もっていた雪と同化し、目では分からなくなっていた。
「妃、もう終わりよ。帰りましょう。」
「あー、先帰っててくれ。もう一服してくから。」
村主はちらりとこっちを見やり、風邪を引かないよう念を押してからドアを潜り抜けた。
白い外を見つめ、心を落ち着かせる。
この前みた、相馬と長髪の女の子。それは見るからにお似合いで、私じゃやっぱり釣り合わない事を証明していた。
気が滅入る。どうしたものか。一人で居る分、思考も暗い方へと独りでに転がって行ってしまう。
―ブブブブ
静寂を破るかのように携帯が着信を告げる。苛つき、名前め確認せずに出てみれば知らない男の声と、相馬の喚く声。
「あー、と。近藤妃か?」
「そうだけど、誰だよお前」
嫌に落ち着いた声は佐藤潤だ。と一言告げ、「相馬が話が有るらしいんだが、ウジウジしてるから変わりに俺が掛けた」と状況説明までしてくれた。
となると、職場の同僚か。
「もしもし、近藤さん?」
弱々しげな声音の相馬の声が耳を掠める。
「今から、会いに行ってもいい…?」
いつも自信満々な相馬の声とは思えない弱い声。
「早くしろよ、遅いんだよばーか」
それは、肯定を意味していた。
まあ、あの子は職場仲間なのだろう。今、確信した。
通話を切り、息を吐く。
佐藤の番号、教えて貰おう。そんで、仕事中の相馬を教えて貰う。
さっきまでの哀しみは、アイツを待つ楽しみに変わっていた。
来たアイツを下の名前で呼んでやろう。そんで、顔を撮ってやろう。だから早く来い。博臣。

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