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□『相妃小説』
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ふと、机の上に散らばる写真が目に入る。写真の中には、会うことの無い姫の写真。
この前、佐藤くんについて行って村主さんと会って来たのを思い出す。
彼女は俺の事を覚えてはいなくて、青山くんと呼んだ。
その彼女の口から零れ落ちた言葉は、胸の奥に雫となり投下され、染み込んだ。
元気にしている彼女達は、もう俺には会ってくれないのだろうか。
彼女は、俺をもう想ってくれないのだろうか。
彼女は、苦しんでいないだろうか。
永遠に続く、疑問は脳の中を駆け巡る。そんな考えを消したのは、佐藤くんの一言だった。
「相馬。今から、近くの支店の奴らがこっちにくるんだと。」
「へー、それは知らなかったなぁ。」
急に現実に戻された脳は、不協和音を奏で、くすぶりを広げていく。気に入らない。
いそいそと写真を片付け、残りの休憩時間を満喫しようと、外に出る。
爽やかな風は、くすぶりを取り払い、安心感を与えてくれる。
遠くから聞こえてきた足立くんと村主さんの青山くんと呼ぶ声。
目に飛び込んで来たのは、金髪の目を見開いた彼女。
「ッ近藤さん!」
一瞬泣きそうになった目は見逃さないよ。今度は、君と俺と姫で歩んで行こう?
君と恋人になる道は長そうだけど、諦めないから。
「ばーか。」
君の呟きに耳を傾け、俺と君は静かに微笑んだ。

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