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□『その笑顔が魅力的』
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相馬の笑った顔が好きだ。


それこそ、初めて会った時の第一印象はいやにキレイに、作り物くさく笑うな。と。そう思うくらいには、俺の中での相馬は笑っていたから。

普通にしていたらまずわからない人の秘密、弱味をどこからか拾ってきてはそれをネタに説得という名の脅しをするやら、場を引っ掻き回すやら。
そういう時の相馬はいつも、本当に楽しそうに笑っていて。

そんな風に、自分のことは一切見せてこないのに周りの変化を楽しむ相馬を、最初あまり好きとは言えなかった。



笑う顔が印象的だ、とは言ったが相馬は他の感情表現も豊かだ。
叩かれれば(だいたいはからかうせいで自業自得だ)涙を浮かべるし、
苦手な人…例えば伊波なんかが近くにくると知れば先を想像して顔を引きつらせる。
困ったことがあれば、眉を下げて口角も下がる。

実に表情豊かで、ついたまに、少し、普段の腹いせにと虐めてみればやっぱり泣いたり怒ったりと面白くて、可愛い、と。
そう思った。


それでもやっぱり相馬には笑った顔が一番似合っていて。

だから、''本当は佐藤くんのことが好きで仕方が無いんだ''
と今までに見たことのない、顔を赤くして、でも悲しそうに、ボロボロと泣きながら告げてきた相馬を、咄嗟に抱き寄せていた。


思えばいつでもそばにいた。
同じ職場で、同じ職種で、年齢も同じ。
必然的に一緒に過ごすことは多かったけれど、しかしそれでも相馬はよく隣で怒ったり泣いたり。笑っていた。


ニコリと垂れ気味な目を細めて笑う顔はキレイで。
持ち前の観察力のせいなのか、無愛想でわかりにくいだろう俺のことをよく理解していて。
それでからかったりしてくる事もあったけれど、さりげなくサポートをしてくれたりもして。


ああ、好きだったのか。


そう気付いたのは、泣きじゃくる相馬を、無意識のうちに抱きしめた時だった。

佐藤くんが轟さんのことを好きなのはもちろん知っているし、応援したかった。
だけどそれでも好きなのをやめられないんだ。

抱きしめた腕の中でそう言ってくる相馬の涙を拭って、真っ直ぐに見つめて。
たった今自覚したばかりの''好き''を精一杯に伝えて、もう一度抱きしめた。



そんなことがあってから、もう幾月も過ぎていった。
就職が決まって、ワグナリアをやめようと、もう、そんな頃の休日。朝、俺の家。


「相馬、髪、癖ついてるぞ。」

「えっほんと…って佐藤くんなんで更にぐしゃぐしゃにするの!」

相馬とは、あの頃にお互いに告げた想いのままに、所謂お付き合いを始めて。
それは今現在も続いている。

「種島さんがワグナリアやめたからって、最近俺の髪の毛で遊びすぎだよ佐藤くん!」

付き合い始めて、恋人をしているうちに、相馬は自然と自分のことも話すようになったし、
家を教えてくれてくれたうえに合鍵まで渡してきた時は中々に感動したのは今でも鮮明に覚えている。
その時はとっくの昔にこちらも合鍵を渡していたし、なんなら相馬の荷物は結構な量俺の自宅に置いてあったけれど。
それだけ弱味になりうるものを見せようとしなかった彼が自分に寄ってきてくれたと思うと本当に嬉しかったし、大事にしたいと思った。





「相馬、ストレスは発散しないといけないだろう。」

「他で発散しなさい!」

ふー。軽くため息。
ちょっとしたふざけ合いを一区切りつけて、後ろから抱き込む。
そのままぐしゃぐしゃにした髪を整えるようにゆっくりと撫でていると、くすくすと笑い声が漏れる。

「佐藤くんの手は安心するんだ」

顔を綻ばせたまま目を閉じてこちらに体重を掛けてきた相馬をさっきよりも、少し強く抱きしめて、撫でる。

何度でもいう。笑顔が一番可愛くて好きだ。

そうしていると、笑い声は消えて、代わりに寝息が聞こえてきた。
まだ少し眠かったのだろうか。安心した顔で眠る相馬の顔を眺めて思う。


物音のしない、寝息だけが響く静かな空間だった。




ふと、幸せだ、と思った。

暖かくて、離したくなくて、愛しい存在が腕の中で眠っている。

こんなに幸せなことはないんじゃないか、と。そんな風に。

もう、この心地よさに2人ずっと包まれていたい、と。

ああ、幸せだ。

だから。

「なあ、結婚、しないか。」

ごくごく自然とその言葉は出ていた。

ゆるりと相馬の瞼が持ち上がる。
しっかりと聞こえていたらしい。少しぼんやりとした瞳で、でも少し驚いたような瞳で、俺を振り返る。

そりゃあ驚くだろう。
なんでもない日の、しかもさっきまでふざけていて、ムードも何も無い。
唐突すぎるプロポーズ。

でも、今言いたいと思った。

居心地がよくて、くすぐったくて、どうしても手放したくなくて。

本当に好きで。

ずっと続けば良いと、そう思って。

頭に乗せていた手を、頬まで降ろして、キョトンとした目を見つめる。
頬にやった手でやんわりと、包むように撫でながら。

「結婚、しよう。」

もう一度告げる。

と、しばらく困惑した顔をしていた相馬は、俺の大好きな笑顔を見せた。

「俺で良ければ、是非。」

静かな、それでも甘ったるい声音で、俺の愛しい人は、俺の幸せを分かち合ってくれた。






俺たち、結婚します。






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『青い空と金色の星』の鈴星様から頂きました!!

ふぉおおおお甘々佐相きたぁああああ!!!
結婚!!結婚!!(*゚∀゚)o彡°
『相馬さんのことが好きで可愛くて堪らない佐藤さん』という私の好み丸出しのリクエストをこんなに素晴らしい形として作っていただいて感激です!!佐相は早く結婚するべき!!←

一周年おめでとうございます!!ありがとうございましたぁああ!!!

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