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□『愛噛み』
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秘密主義者の相馬と付き合うようになってから、幾つか相馬について知ったことがある。

例えば、
鯛焼きだけじゃなく、他にも洋菓子和菓子に拘らず甘いものなら割となんでも好んで食べることとか。
意外と眠りは浅いほうだとか。
いつでも温かい子供体温をしてるとことか。



そしてこれは最近新たに知ったこと。

相馬には、人差し指の爪を噛む癖がある。




やんわり目を細めふわふわふにゃふにゃと柔らかく笑みを浮かべたり、佐藤くん、と柔く甘やかな声で呼んだり。
どことなく、相馬はどこもかしこもやわっこいイメージがある。
しかしイメージは柔らかくても相馬は人間であることに変わりはないのでちゃんと爪は硬いし、歯もしっかり硬い。
だから爪を立ててしがみつかれたりするとちゃんと痛いし、キスをしながら突き上げてやったりすると硬い歯が当たって痛かったり………………………………………………話が若干逸れたな、戻そう。


細っこい指を小さな口元に運び、淡いピンク色の爪の先、伸びて白くなった部分に硬い歯を立てる。
爪を噛むのは大抵ぼんやりとしているときなので、目を細めぼーっとしながら指先を銜え、かしかしと噛んでいる。


…だから、その。つまりあれだ。


相馬の桜色した小さな口に、細っこい人差し指が銜えられていて、そしてひたすらかしかし爪噛んでるってのは。



正直言って可愛いが半分えろいが半分。


ほら、現に今だって。



俺より先に風呂入った筈なのにまだ少し生乾き気味の髪とか、風呂上がりでほんのりと染まった頬とか、だぼついたシャツの合間から覗く肌とを惜しみなく晒しながらほんの僅か開かれた唇に指先を銜えて、ぼんやりしている。

黒いベッドに寄りかかり、俺を待ちながらぼんやり指を銜えて、いる。


かわいい、が、やっぱりなんかえろい。



「……相馬、いつか爪割れちまうぞ。」
「…ん…、あ、佐藤君。おかえり〜」
「……………。」

声を掛けると、するりと唇から人差し指を抜き去る。因みに抜き去った時、一瞬だけ赤い舌がちらりと覗いた。
そうして爪を噛むのをやめた相馬はこちらに振り返りにっこりと笑んでみせる。やっぱり柔らかい笑顔だ。
だがしかし、別に俺は出掛けてた訳じゃなくて、ただ単に風呂から出てきただけなのだからおかえりって言うのもなんかおかしいと思うんだがな。…まあいいか。



「…ただいま。」

短くそう答えれば、うんおかえりーと、くすくすと愛らしく笑った。


爪が少し気になって、相馬の隣にゆっくり座ると俺はその右手を取り目の前へと翳してみた。
俺より一回り小さく柔い手の、その人差し指。薄ピンク色の部分と白い部分がある爪。噛み癖のお陰で白い部分は少しだけ傷んでいた。

「なぁ、」
「うん、なあに?」
「爪を噛むのは、無意識か?」
「ん、そうだね、なんか気付いたら噛んでる。」
「噛むのは…」


噛むのは人差し指だけなのか?そう質問しようとしたが、ふと、ちょっと楽しそうな悪戯を思い付いてしまった。俺は内心ほくそ笑んだ。
顔に出したつもりはなかったんだが何か感じ取ったらしい相馬がきょとんと首を傾げ見上げてくる。


「佐藤君?」
「…相馬、俺の人差し指も噛んでみるか?」
「えっ、」


驚いたような顔をする相馬の唇を、人差し指でゆっくりとなぞる。何度も口付けたことがあるから知ってはいるけれど、やはり何度触れても相馬の唇はいつだってやわい。


「でもおれ…佐藤君を噛むなんて…できない…」
「いいから、ほら。」
「んむ、」

柔らかい粘膜を傷付けないよう慎重に指先を侵入させる。少しだけ舌先をついついとつつき苛めてやり、その後また少し引き抜いて、爪が噛める位置にと指を落ち着かせる。
相馬はその間、照れたように眉尻を下げさせ、頬をじんわり染めながら大人しくしていた。


「…噛めよ。」

短く告げてやると、相馬が俺の指を銜えたままちらりと見上げてくる。困ったような表情で、頬を赤くしながら上目遣いで。
…こいつ、これで計算してないってんだからタチが悪すぎる。


するん、と指先にいやに柔らかく温かい感触。どうやら相馬は噛まずに舌で舐めてるらしい。
ちろちろと何度も、銜えられたままでいる指の腹が柔らかい舌で擽られている。なんだかすごい、少しずつ少しずつ、じわじわと性感を刺激されてるみたいな心地がして、落ち着かない。


「…噛まねぇのか?」


問えば、相馬は「んぅ〜…」と指を銜えたまま困ったように唸る。なんか子犬みてえ。
唸ること数秒。一回だけゆっくりと目を閉じて、再び目を開ける。そうして何かを決心した相馬が口からゆっくり俺の指を抜かせると、どういうわけかぐいぐいと俺の身体に乗り上げてきた。


「うお、な、んだ。おい、」
「あのね、あのね……」


相馬は俺の膝に乗っかり、向き合う姿勢で落ち着いた。そのままゆっくり首を傾げて見せると、さっき俺がしたのを真似るように、俺の唇をするりと指先で撫でてきた。



「佐藤君の指もいいけどね…、おれ…こっちのほうがいいなぁ…なんて…。……だめ?」


恥ずかしくて顔真っ赤にしながら、キスがしたいと、哀願する。



………うあ。
なんなんだこいつ。こんな無自覚な奴に勝てる訳がない。チクショウ。


「…だめな訳ないだろ、」
「ほんと?」
「ああ…」


頬に手を添え、そうっと近付けてやると、相馬は嬉しそうに一回だけふにゃりと笑うと、すぐに目を閉じキスを受け入れてくれた。



触れ合ったままそっと開かれた唇。髪をゆっくり撫でながらおいでと招いてやれば、相馬の舌が少し躊躇いがちに、侵入してくる。
…舌は噛んじゃだめ。かわりに優しく舐めて歓迎してやろう。






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サイト10万ヒットを記念して『嘘つきぴあにすと』の碧威様から頂きました!!

ふわぁあああ甘ったるい佐相きたぁああああ!!!佐相ジャスティス!甘々な佐相ジャスティス!!碧威様の書かれる描写はエロくて好きです…ッhshs←

ありがとうございましたぁああ!!!

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