家事とけんかは家族業

夜の音
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「志望校ね・・・」

みんなが寝たであろう深夜
「課題やってる」
と偽って こっそりと学校でもらった何枚かの高校案内の紙を広げていた
こんなのを見るよりも実際に高校へ行った兄たちに話を訊けばいいようなものだが
なんか兄たちの言葉に左右されるのが嫌なので
こればかりは自分で決めることにした

どの高校案内を見てもいまいちピンとこない

なにを基準に決めればいいのだろう?

自分の能力か 校風か

それとも家から近いほうがいいのか

「やっぱアニキに訊こうーかなー」

居間のちゃぶ台におでこをつける
まだ ほんのりとめんつゆのにおいがする
ソーメンほぼアニキに取られたなぁ などと思っていると
すぐ近くで小さく音が鳴っていることに気付いた
驚いて顔をちゃぶ台から上げる
耳鳴りか?
と思ったのだが  その音が歌うようなメロディーを奏でているので すぐなんなのかわかった

今日はきれいな三日月が見えていたな

そう思いながら立ち上がり すぐそこの戸を静かに 音がでないように気をつけながら開けた

思った以上にすべりが悪く 静かに開けるのは至難の技であった
かなり苦戦し 時間をかけて開けた戸のその先にある縁側には 微笑みながらわたしの顔を見ている 4番目の兄 奏多兄(かなたにぃ)の姿があった
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