家事とけんかは家族業

高校へ行く理由
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1番上の兄さんの名前は「(さく)」という

どうもみんなは「さく」と聞くと 「咲」とか「裂」とかの漢字を思い浮かべてしまらしい
そしてわたしが「朔」と書いて説明しても みんな「見たことがない」と言ってわたしに意味を求めてくるので
「はじめって意味で 『朔日(ついたち)』ってこの字を書く」と辞典を片手に説明しても 「知らない」と それ以上の追究はしてこない

わたしをひろってくれたのは 朔兄さんだ

そのとき 兄さんは14歳だった
今のわたしと同じ
昔は14歳にもなれば 兄さんのようになれると思っていた
物事を自分で判断できるようになって
しっかりして
人の気持ちとか 場の空気とか 読めるようになって

なのに 全然だ

不安なことが山ほどあるし あんなに堂々とはできやしない

まだ14歳だった兄さんは わたしを家族にする決断を下してくれた
不安など 一片も見せなかった

まだ4歳で この世のことなどわかるわけもなく 不安で泣きだしそうだった小さなわたしに どれだけ兄さんは大きな存在だったろう

わたしは 兄さんを敬愛している
わたしがここに存在できるのも 兄さんのおかげだから


「行きたかったら 高校に行っていいよ」
兄さんはこのごろ よくわたしにこう言ってくれる
中三だから 当たり前だ
笑顔でこう言ってくれるけれど わたしは家のことが心配だった

「高校は金がかかる
 金を払うのは親だ
 なんで高校へ行くのかよく考えろ」

先生の言葉が頭の中を回転する
お金がかかる これ以上家に甘えたくない

なぜ高校へ行くのだろう
勉強は好きじゃない
なんのために勉強をするのかわからない

わたしには 夢がない

それなのに 8人家族のうち 成人が3人だけという家庭に 金を出してもらっていいのか

それと 高校へ行くべきかどうか悩んでいる理由がもうひとつある

・・・・・・それもアニキが関わってくるのだけれど
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