よみもの

□Girl's Talk
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「瞬、少しこれから時間はあるかしら?」


応接ソファに腰掛け、三人お茶を飲んでいると、カップをソーサーに戻したた沙織が切り出した。

「?ええ、大丈夫ですよ。今日はこれ以上予定はありません。」

「よかった!」

沙織は手を合わせて微笑んだ。

「じゃあ瞬、これから外にお昼を食べに出掛けませんか?たまには気軽にランチでもしたいの。」

「もうお昼ですものね。解りました。喜んでお供します。」

嬉しそうな沙織に、瞬も思わず頬が緩む。

それでは、とサガが立ち上がり、電話機に近づく。


「サガ?何をしているのです?」

立ち上がったサガに沙織が問う。

「は、お出かけのようですので運転手と護衛の手配を。」

と再び受話器を取る。


「ありがとう。でも護衛は結構です。今日はプライベートを楽しみたいの。」

多少申し訳なさそうに、沙織はサガの申し出を断った。

「しかしそれでは安全が確保できません。」
大切な御身なのですから、とサガが渋る。

「護衛なら瞬がいるではないですか。仮にも聖闘士ですよ。一般人に遅れをとるはずもありませんよ。ねぇ、瞬?」

「はい、任せて下さい。」

瞬はにっこり笑って護衛を引き受ける。らしくないと言われっぱなしだが、確かに瞬だって聖闘士なのである。それに沙織に頼られて、嬉しくもあった。



サガは受話器を置くと、観念したという風にため息をついた。

「解りました。許可しましょう。しかし、あまり遅くなられないように。」

その言葉に沙織の表情が輝く。
「ありがとう、サガ!さ、瞬。時間がもったいないわ。早く行きましょう!」

身を翻すかのように、瞬の手をとった沙織は弾むように出掛けて行く。
「待って下さい!沙織さん!」



賑やかな二人の声と足音が遠ざかっていく。常らしからぬ、沙織の年相応にはしゃいだ様子にサガは苦笑する。

「たまには羽を伸ばすのもよろしかろう。」

年若いアテナの重責を思うと、このような機会は貴重で意味があるように思えた。


「…しかし、それとこれとは話が別だ。」

瞬には申し訳ないが、いくら彼が護衛の代わりにつくといっても、心配は拭いきれない。瞬の強さは知っているが、気の優しい彼のこと。とっさの危機に力技を用いるとは思えない。何より少女の用な可憐な瞬と沙織の二人連れでは、見た目からして危なっかしく、安心して見ていられない。


サガは再び受話器を取ると、いずれかに電話を架け始めた。
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