よみもの

□彼と彼との急接近!
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「ア、アンドロメダ…」

その意外な訪問者に、さすがのカノンも多少面食らった。アンドロメダと言えば、先日少々、いやかなり恥ずかしい姿を彼に晒してしまったことを思い出す。あの場面が頭に浮かび、カノンは何だか急にいたたまれない気持ちになった。

そんなカノンの微妙な表情の変化を読み取ったのか、瞬は言葉に詰まりながら早口で話す。

「あっ、あの。僕、今日は沙織さんのお供で日本から来たんです。日本のお土産があるから皆に配ろうと思って。はい、これ。よかったら食べて下さいじゃあまた…」

早口で言い終えると、瞬は高速で身を翻しその場を去ろうとした。カノンは、その瞬の腕を咄嗟にがしっと掴んだ。

「ひゃぁっ」

瞬があげた情けない悲鳴に、カノンは我に返った。
な、何をしてるんだ俺は!

緊張で汗をかいていたせいか、瞬の腕はしっとりとカノンの掌に吸い付く様に馴染んだ。腕を掴まれた瞬は、顔を真っ赤に染めながら、震える長い睫毛に縁取られた大きな瞳で、カノンを見上げてくる。

う…やばい。これじゃまるで俺がいたいけな少女に言い寄る悪い大人みたいじゃないか。

カノンは慌てて瞬の手を離す。瞬も解放された手を逆の手でさする様に包み込み、下を向いてしまった。

「…悪かった。お前があまりにも急に立ち去ろうとするもんでな。」

カノンはなるべく動揺を押し隠し、努めて冷静を装って言った。

「こ、こちらこそすみません…。急に訪ねておいて一方的に帰るなんて失礼ですよね…」

ますます俯いてしまうアンドロメダを見ていると、自分が彼をいじめてしまったようで罪悪感が湧いてくる。。


「…お前、時間はあるのか。」
「えっ?」
「暇なら茶でも飲んでいけ。最もそんなに大層な物は置いて無いがな。」

瞬は驚いた様に目をぱちぱちさせている。

「どうした、来ないのか。」

そう言い放つと、カノンはさっさと部屋に戻って行った。

「は、はいっ。お邪魔しますっ。」

瞬は急いでカノンの後に続き、扉を閉めた。
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