よみもの

□本日晴天交際日和
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「カ〜ノ〜ン〜!起きてよ〜!」

ベッドのスプリングがボヨンボヨン振動するのに合わせて、カノンの身体も上下に跳びはねる。



眠い。眠らせてくれ。後5分といわず、1時間程。

心頭滅却すれば火もまた涼し。カノンは鋼の自制心で眠りの世界へと逃げ込んだ。ベッドの上で跳びはねていた瞬も、敵の手強さに思わずたじろぐ。しかしそのまま黙っている瞬ではない。とうとう最終手段、やられるとイラツキ度NO1の必殺技、布団剥ぎに出た。



「っ、瞬お前!何するんだよっ」

布団を剥ぎ取られたにも関わらず無防備に身体を晒して寝ていられる豪気な者はそう多くはない。それに洩れず、カノンも肌寒くなった身体を腕で抱きながら瞬に非難の目を向ける。

布団を手に、してやったりの瞬は不敵な笑みでカノンを見下ろす。

「だって、もう10時だよ。いつまでも寝てるカノンが悪いんだよ。今日は僕と出かける約束でしょ!」



そうだった。
アテナの護衛で日本に来た黄金聖闘士達だが、早々の事件解決にあっさりと任務解除となり、残りの滞在時間はアテナの計らいで休暇となったのだ。その余暇に瞬と出掛けるという約束をしたのだが、夜更かしが祟ってすっかり寝坊してしまったようだ。


約束とあらば仕方がない。カノンはまだ睡眠を欲する身体に鞭打ち、のっそりと起き上がる。顔面に被さる長い金髪をかきあげると、ひとつ大きく欠伸をした。


「カノン、早く顔洗って!服はこれでいい?朝食は外でブランチでいいよね?」

ベッドにぼんやりと座り込んでいたカノンであったが、ちょこまかと走り回る瞬を見て思わず笑みがもれる。そんなに一緒に外出するのが楽しみだったのか。ここまで喜ばれては男として嬉しくないはずがない。


「よしっ」

今日は瞬を思いきり甘やかしてやろう。カノンはそう心に決めると、ベッドから立ち上がった。






屋外はまだ午前の名残を残した爽やかな陽光が、街路樹をみずみずしく照らしている。紅葉しかけの銀杏の葉はまだ黄緑色で、間もなく訪れる深い秋を待ち侘びていた。


今日は快晴。行楽日和。
瞬はカノンと手を繋いで、爽やかな秋の公園を歩いていた。犬の散歩をする人、ランニングをしている人。みなそれぞれに自由な時間を過ごしている。



二人きりで外出するのって久しぶりだなぁ。それに日本でカノンと普通にデートだなんてあんまり想像して無かったから、すごく新鮮。手を繋ぐだけでドキドキしちゃうよ。いつもと同じ散歩道なのに、何だかすごく楽しい!



「ご機嫌だな」

瞬があまりににこにこと嬉しそうなので、カノンはつい苦笑してしまう。カノンに呆れられたと思ったのか、瞬は少し不服そうな顔で瞬が答える。


「だって、嬉しいんだもん。ギリシアじゃなくて日本でデートは初めてだし。それに日本でデートって、何だか僕がカノンを独り占めしてるような気がして…」


少し頬を染めて俯く瞬に、一発でカノンがノックアウトされる。


何だ?こいつのこの可愛さは。わざとか?狙ってんのか!?チクショーめ!独り占め上等!今日は俺はお前のものだ!

心の中で感涙したカノンは、ギュッと瞬の手を握り返した。その感触にカノンを見上げた瞬は、照れたような彼の横顔に彼の思いやりを感じ、思わず微笑んだ。


「カノン大好きっ」

瞬はカノンの腕に飛び付いた。カノンは瞬の軽い身体を受け止めると「俺もだ」瞬の額に優しくキスを落とした。
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