よみもの

□正しい男男交際のすすめ
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ある麗らかな午後。
聖域には鳥のさえずりが響き、黄金聖闘士達も平和な惰眠を貪っていた。


「今日は決裁の書類が少ない…」

サガは机の上を眺めながら、ささやかな幸せを噛み締めた。
この調子だと、午後は久しぶりにゆっくりできるだろう。
そうしたら、久しぶりに夕食を手作りしようか。
もともと料理は好きだが、忙しさにかまけて最近はまともに調理したことが無い。
出来上がったらたまにはシュラか誰かを呼んで、一杯飲むのもいいかもしれないな。

ウキウキと椅子に腰掛ける。



ふと、見慣れない封書が卓上に置いてあるのに気がついた。
封蝋で封をしてある上質なもので、刻印にはゴシック体でBの文字が押されている。


「何だこれは」

サガは首を捻る。
全く見覚えは無いが、こうやってわざわざ執務室の卓上に置いてあるぐらいだから、自分宛ての物なのだろう。
サガはペーパーナイフを手にとると、封を切った。




『前略 サガ殿
貴公はこの度、伝統と名誉ある、「全国可愛い弟を守る兄の会」名誉会員に選ばれました。
つきましては、本日15時より定期会合を催しますので、是非ご出席のほどをお願い申し上げます』



……なんだこれは。


一通り文面に目を通したが、内容が全く意味不明で理解できない。
こんな妙な団体が存在していたことも知らないし、自分がその名誉会員に選ばれるいわれも全くない。


だって、可愛い弟だぞ…?


自分が知っている限り、弟らしき物はカノンしかいないはずである。
あいつは可愛くないし、守ってやりたくなるようなタマでも無い。
それどころか、あの愚弟はいつも面倒事ばかり起こし自分の胃を痛め付けている。




「馬鹿らしい…」

何かの間違いだ。
サガは封筒をごみ箱に投げ込むと、自分の執務に取り掛かった。






15時。
そろそろ執務にも一区切りが着き、サガは肩をコキコキ鳴らした。

「さてと。今日はそろそろ自室に戻るか」

夕食のメニューは何にしようか?と考えながら席を立つ。

その時である。


「どこへ行くつもりだ、サガ」

自分を呼び止める声に顔を上げると、いつの間にか、アイオロスが扉に寄り掛かっていた。

突然の出現にサガは思わずビクリと怯んでしまった。


「何だ、アイオロスではないか。そんな所で何をしている」

「それはこちらの台詞だ」
「は?」


怪訝な顔をするサガに、アイオロスは扉に寄り掛かった身を起こすと、真剣な顔で物申した。


「今日は会合の日だと言っただろうが〜〜!!」
「お前かぁ!この妙な手紙の犯人は〜〜!!」


ごす。
アイオロスは今日も容赦無く壁に叩き付けられた。


「全く。お前の妙な遊びに付き合ってられるか。俺は行くぞ」

その時、アイオロスを残して執務室を立ち去ろうとしたサガの腕を、がっしりと掴んだ者がいた。その以外な人物に、サガも困惑を隠せない。


「お前…、これは一体どういうつもりだ?」


サガの腕を掴んだのは、何とフェニックス一輝、その人であった。
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