よみもの

□あなたの隣に
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「うぅ〜〜」


瞬は城戸邸の自室で、枕を抱きしめながらベッドをゴロゴロ転がっていた。たまに起き上がり、しばらくぼーっとしたかと思うと、急に枕をボスボス叩きだしたり、とにかく様子がおかしかった。



沙織の供をして聖域まで出向いていた瞬だが、聖域での仕事が一段落ついた沙織が日本に帰国するのに合わせ、再び城戸邸に戻って来ていた。

『随行ご苦労様でした。しばらく仕事はオフでいいわよ』
沙織に申し渡されたのは良いが、特に何もすることが無く部屋で悶々としているわけであった。



部屋でじっとしていて思い出されるのが、先日の聖域での出来事である。



『触らせるな、お前の身体を、誰にも』

耳元で熱く囁き、瞬を抱きしめてくれたカノン。思い出すだけで瞬の心臓は高鳴り、恥ずかしさの余りベッドに突っ伏してしまう。


僕は期待してもいいのかな?いや、僕が何もかも自分の都合の良いように考えてるだけかも…。


カノンのばか〜〜!

堂々巡りの思考に、瞬はまたしてもベッドの上で身もだえる。



コンコン。
不意にノックの音が響く。

その音にはっと我を取り戻し、瞬は身を起こした。いけない、すっかり自分の世界に入ってた。誰だろう?ベッドを下りると急いでドアに向かう。

「は〜い、今開けます!」


パタパタと走り寄り、ガチャリとドアノブをひねると、そこには笑顔の星矢が立っていた。


「よっ、瞬!今日は暇か?」

「え、特に用事もないけど。どうしたの?」

「暇ならちょっと俺の家に来いよ。会わせたい奴がいるんだ!」
お前、驚くぞ〜!

星矢は手を口に当てて、ぐふふ、と笑っている。瞬を驚かせたくて堪らない、といった様子である。その顔が、ご主人様に誉めてもらいたい仔犬の様で、何だか可愛い。瞬の頬が思わず緩んだ。


星矢はよく瞬を遊びに誘い、外に連れ出してくれる。天真爛漫な星矢の笑顔は、いつも瞬の心を明るくした。今の星矢の笑顔は…何だか少し企んでいることがありそうだが、誘いに乗るのもいいかもしれない。部屋で一人非生産的な考えに浸るくらいなら。


「わかった、今行くから、ちょっと待ってて」

瞬は外出のために急いでパーカーを羽織ると、星矢の元へ走り寄る。



僕に会わせたい人だって?一体誰だろう…。

瞬は星矢の住家のヨットハウスへ向かった。
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