よみもの

□他人の不幸は蜜の味
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その夜、聖域では盛大な宴席が設けられていた。アテナが聖域に戻って来た今日、儀礼的に聖闘士達が一同に集められ、そのまま宴会になだれ込んだ、という訳である。

みんなで仲良く、と言った団体行動が苦手なカノンだが、アテナの召集ならば顔を出さない訳にはいかない。宴席の端の方でマイペースで酒を飲んでいたカノンは、頃合いを見計らってこっそりこの場を抜け出そうと考えていた。



「うわははは、やったぜ、今度は俺が王様だ!」

宴席の中央で、どっと歓声が上がる。カノンが目線をやると、くじのような物を手にしたデスマスクが、テーブルに片足を乗せ勝利の雄叫びを上げている。残りの黄金聖闘士達と瞬が何やらやっているらしい。

王様ゲームか…ベタな。

カノンはその成り行きを眺める。


「じゃあいくぜ。2番はこれから語尾に『ニャン』を付けて話せ。このネコミミを装着してだ。さあっ2番誰だっ」

ぶはっ。
その命令に皆一斉に吹き出した。そして期待に満ちた目で今回の被害者を探し始める。

「お、俺だ…」

しぶしぶ挙手をしたのはアイオリアだった。

「ぶっ、マジで!お前かよ!」
デスマスクは既に笑いの余り目に涙を浮かべている。
「じゃあ早速やってもらおうか。まさか嫌とは言わないよな?ルール破るなんて男がすることじゃないよな?」

「ぐっ……!」
男と言う言葉を出されたら、アイオリアは従わざるを得なかった。ニヤニヤしながらネコミミを差し出すデスマスクからそれを受け取ると、頭に装着した。

「ほら、なんか喋ってみろよ。」
「…う、うるさい、ニャン!」


「ギャーハハハハハ!」
「マジ最高!アイオリニャンだ!」
会場が爆笑の渦に巻き込まれる。デスマスクはもちろん、ミロは腹を押さえ床に倒れ込み、あのシュラでさえ呼吸困難を起こしている。瞬も笑っては悪いと思ったが、耐え切れるものではなく、プルプルと震えながら吹き出した。

「さあっ、早く次をやるニャン!次こそ俺が王様になってやるニャンッ!」
顔を真っ赤にして怒るアイオリアが、早くも次のゲームを取り仕切る。

皆、まだ先程の笑いの余韻に震えながら、次々にくじを引いていった。
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