よみもの(瞬受以外)
□We are drinking!
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「うぉ〜、何だかこのメンバーだけっつのも久しぶりだな」
バーテンダーに酒を注文しながら、デスマスクは早速カウンターに腰掛ける。
「そうだな、三人だけで揃うのは以外と久しぶりだな。いつもは二人だったり、他の人間がいたり」
続いてシュラも椅子に腰掛ける。
「サガは仕事から手が離せんらしい。何だか悪いな、私達だけ遊んでいるようで」
本来は一緒に来るはずだったサガに気を使ったアフロディーテに、デスマスクが鼻を鳴らす。
「はっ、あいつは仕事が趣味なんだよ。大人は自分で仕事のオンとオフを調節できなきゃあな」
乾杯も待たず出された酒に口を付けるデスマスクに、シュラが澄まして言う。
「万年オフ人間が何を言う。お前は一体いつオンになるんだ?」
「そんな野暮なこと聞いちゃいけないぜ、シュラちゃんよ」
デスマスクの視線がシュラの頭を通り越す。視線を追うと、L字カウンターの向こう側に、妙齢の女性二人組が座っているのが見えた。デスマスクの視線に気がつくと、彼女達はこちらに愛想良く手を振った。
そんな彼女達に手を振り返すデスマスクを見て、シュラがため息を漏らす。
「お前は本来に節操がないなぁ。少しは真面目に女性と付き合ったらどうだ」
「何を言う、俺はいつでも至って真面目だ。二股かけたこともないんだぜ!」
「複数人の女性と関係を持つとき、実はその誰とも正式にお付き合いはしていない、という意味だろ、お前のは」
アフロディーテの冷静な突っ込みに、デスマスクは「鋭いな、お前」と爆笑している。このままだと水掛け論になるので、シュラはデスマスクの素行の追究については諦めることにした。
「そういえば付き合うと言えば。カノンと瞬は付き合い出したらしいな」
新しい話題を切り出したシュラに、アフロディーテは頷く。
「ああ。まだ付き合い始めでな、あの二人。初々しくて、見ていて微笑ましいよ」
何かを思い出したのか、クスと微笑んだ彼に、デスマスクは複雑な表情を向ける。
「初々しいカノン…。おえっ、考えるだけで気持ち悪ぃ〜!」
両肩を己の腕で抱いて身もだえるデスマスクをシュラが窘める。
「気持ち悪いは無いだろ。お前カノンと親しそうだったじゃないか。瞬と付き合う前にそういう話を聞いて無かったのか?」
「まあ、親しいっつーか、たまに飲みに行く程度?あいつといると女がガンガン寄ってくるからよ」
悪びれずに笑うデスマスクに、アフロディーテが釘を刺す。
「その話、瞬には絶対するなよ」
もし話したら…と彼はカウンターの上に活けてあった薔薇を一輪取り、デスマスクに向ける。それにデスマスクは思わず腰を浮かす。
「ちょっ、マジになんなよ!分かったって!絶対瞬には話しません!」
ようやく薔薇を引っ込めたアフロディーテに悪態をつきながら、デスマスクはガタガタと椅子を元の位置に戻す。
「だいたいさぁ、男は皆浮気の一つや二つは絶対にするもんだろ。それを許せないなんて、恋愛に夢見てるガキだけだぜ。カノンも何であんな面倒臭いガキと付き合うんだか。瞬ってだいたい何歳なんだよ」
確か13歳のはず、と生真面目に答えたシュラに、デスマスクは「半分以下の年齢か!重度のロリコンだな、あいつ」と失礼極まりない台詞を吐く。
「だが俺も聞いたときは正直以外だった。カノンが年下と付き合うなんてな」
シュラの台詞に、デスマスクが「お?」と言う顔をする。
「何が以外ってんだ?あいつと女を引っ掛けたときだって、年下の女はごまんといたぜ」
ニヤニヤと物言いたげに尋ねるデスマスクに、シュラが答える。
「あいつは年上が好みかと思ってたからな。何だかんだ言って、カノンは弟気質だろ。遊びならまだしも、本気で付き合うなら甘えられる年上がいいだろうと思ってた」
その言葉に、またしてもデスマスクは爆笑する。
「ギャハ、何でお前らそんなに鋭いんだよっ。お前一体カノンの何なんだ、シュラ!」
腹を抱えて息も絶え絶えのデスマスクに、シュラは「失礼な」と非難の目を向ける。
「でめまあ、確かにカノンには少し甘えたがりの所があるかな。サガも言っていた。昔から意地を張るけど、本当は甘えたくてしかたない態度が丸見えで可愛いって」
アフロディーテもふふ、と笑う。
「陰でこんなに言われてちゃ、普段カッコつけてるあいつも形無しだよな」
今頃どっかでくしゃみでもしてるかも、という発言に、堅物のシュラも思わず吹き出した。