よみもの

□他人の不幸は蜜の味
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「ぉ、お待たせしました…」

ガチャリと扉が開く音がすると、皆は酒を飲んでいた手をやすめ、一斉に振り向いた。

「おおお〜〜!!」

広間には感嘆とも言えるどよめきが広がる。やはりと言うべきか、瞬は見事にメイド服を着こなしていた。現代風にアレンジされてあるその服は、頭にはボンネットの代わりにヘッドドレス、スカートは膝上20センチのミニスカート、スカートの下には白いオーバーニーソックスがガーターベルトで留められている。絶対領域が眩しい。


「うわっ、お前エッロ!俺ちょっと引くわ。」
デスマスクが口元を手でおおい、わざとらしく言う。
「やばくね?なんか冗談になってね〜よ。イメクラにみ…ごふっ!」
みなまで言う前に、アフロディーテによって殴り倒される。

「よく似合ってるぞ、瞬。私の見立ては確かだったようだ。」
アフロディーテは満足そうに微笑む。

「ホントによく似合ってるぞ、瞬!その辺の聖闘士の女子よりよっぽど可憐だぞ!」
ミロも満面の笑みでそう答える。期待通りの瞬の仕上がりに、皆大盛り上がりである。

「うう…」

褒め言葉を貰ってもちっとも嬉しくない。一応僕だって男なのだ。それにしてもこのスカートの短さはどうにかならないものだろうか。
瞬は出来るかぎり足を隠そうとスカートを引っ張る。

「そういや、お前下は何履いてんだ?まさか下まで女物か?」

いつの間にか復活したデスマスクが、事もなげに瞬のスカートをペロリとめくる。


「ぎゃっ!」
「「「ぶはっ!!!」」」

今度はさすがに皆酒を吹いた。真っ赤な顔をしてごほごほ噎せている。様子を伺っていたカノンも宴席の端で一人咳込む。アイオリアに至っては、酒では無い何やら赤い液体を鼻から吹いていた。

「や、やめて下さいデスマスク!いきなり何をするんですか!」

瞬はスカートを押さえギャーギャー喚きながら抵抗する。
「何だ、男ものかつまらん。…ぐぼっ!」

「やめんか、みっともない。」
調子に乗っていたデスマスクは、今度はシュラの拳によって沈められる。エクスカリバーで無かっただけ儲け物である。


何とかスカートを死守した瞬はぺたりと床に座り込む。赤い顔をして息を乱したミニスカメイドさんが床に座り込んでいるのは何とも…


「何だか倒錯的だな…」

一同に妙な空気が流れる。誰かがごくりと唾を飲む音が聞こえた。
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