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□蛍を見にいこう♪
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『蛍を見に行きたい』
旅番組に感化された慈郎の一言で氷帝テニス部レギュラーは夜、都内の山に来ていた。
「こんなトコに蛍なんていんのかよ」
「あーん? うるせぇぞ宍戸。 黙って着いてこい。」
道中そんな会話をしながら蛍がいるというスポットへ向かった。
30分程歩くとその場所に着いた。小川がせせらいでいる涼しげな場所だった。
そこには何匹もの蛍の優しげな光が満ちていた。
「スッゲー!! ホンモノ超キレイだC!!!!」
「はしゃいで川に落ちんじゃねーぞ」
いつにも増してハイテンションな慈郎。それをたしなめる跡部。しかし普段はクールな彼も少しだけ興奮している様だった。
「スゲー、こんなたくさんの蛍、俺初めて見た」
「せやなぁ。今回はジローの思いつきに感謝や。日吉、ちゃあんと見ときや」
「言われなくても見てますよ。忍足さん」
目を細める日吉。彼のそんな表情も珍しい。
鳳と宍戸は彼等から離れた場所にある岩場に座っていた。暗やみに紛れて見えないがその手は固く繋がれている。
「キレーだな、長太郎。」
「そうですね。でも宍戸さんの方が」
「『きれいです』てか?」「はい」
「ったく、恥ずかしい奴」
微笑む鳳に対して苦笑する宍戸。
ポツリと宍戸が呟いた。
「俺はお前の方が蛍っぽいと思う」
「俺、ですか?」
頷く宍戸。
「お前の笑顔がさ、蛍みたいだなって。優しいし、柔らかいし、キレーだし。それに……」
「それに?」
「儚い感じがする」
宍戸はうつむき、黙った。
数拍ののち宍戸は続けた。
「儚いっつーか、なんかお前、ふらっと消えちまうんじゃねぇかな、て……」
「宍戸さん……」
「ははっ、何言ってんだろうな俺。さ、跡部たちのトコに戻ろうぜ……っ!」
宍戸が立ち上がろうとすると繋いでいた手を思い切り引っ張られ、鳳の胸の中へと抱き寄せられた。
「長太郎?」
名前を呼ぶと強く抱き締められた。
「おい、長太郎苦しいって……」
「俺は貴方を置いて消えたりしません」
「長太郎……」
「安心して下さい。ここにいていいのは宍戸さんだけです」
そう言って微笑む鳳。
「ちょた…………んっ」
その微笑みに見惚れていると唇を奪われた。
いつもより長くて優しいしキスになぜだか泣きたくなった。
「は、ふ……」
「宍戸さん、好きです」
「知ってる………ほら、戻るぞ」
「はい」
「俺も、好きだから」
「! はいっ!!」
君はまるで蛍の光のようにぼくの心を癒してくれる。
END