SS

□可愛い人
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寒い、狭い街路をテクテクと2人は歩いていた。手を繋いで、獄寺のマンションへの帰途についていた。

離れたくないなぁ

どちらともなく、互いにそう思い、握る手を強くする。
まるで内緒ごとのような2人の関係は、蜜月のようで、愛しく思って仕方なかった。

「手、冷たくないですか?」
ニコッと笑って白い息を吐き出す獄寺にツナもうなづき笑う。

途中コンビニに寄ったりしながら2人は獄寺のマンションに着くと、買ってきたペットボトルの飲み物を足元に置いて、大きなグランドピアノにもたれかかり、キスをする。
軽い触れるだけのキス、音もたてずに離れていく唇に少し寂しさを感じながらツナは口を開いた。
それは他愛もない話ばかりで、平和な日常にいつまで身を置けるのか分からない2人には幸せな時間だった。

獄寺はふ、と窓の外を見た。
夜空が広がっていると思っていたそこには、電柱や電線が邪魔で、三階からはあまり夜空は見えなかった。
追って見たツナは「星が見えるね」とつぶやいた。

冷たいフローリングに広げた足に毛布をかける。純粋にいとおしいと、愛を誓い合う2人なのに、ちらりと見える指先や腰に性欲も覚えた。

外を見るツナの大きな瞳がまるでとろけそうなお星様のようで、獄寺はびくりとする。
それと同時に、小さな目も鼻も口も全部が可愛くて、愛しい気持ちが大きくなって、こんなにも小さな人がボンゴレの10代目にされてしまうんだと悲しい気持になった。

10代目になって欲しいと思う気持ちとともに獄寺の心にはツナを恋人として思う気持ちが強くなってしまったからだ。
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