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□夜空星
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高校生になり、親の干渉から少し解かれたツナはよく獄寺のマンションに泊っていくようになった。
その夜も2人は毛布にくるまって、リビングに似合わない大きなグランドピアノにもたれかかるように窓の外の世界を見ていた。
ぴったりとまるで寄り添うみたいに2人はひっついていた。
真っ暗な暗闇に街燈と、家々の灯りが少しだけ見えた。まるで消えそうにキラキラと輝いて、それが電線や建物の合間から零れ見えた。
「あ、流れ星」
ツナの目線が夜空を横切る星を追いかけて、背筋を伸ばした。
「消えちゃった」
また獄寺にひっついてクスクスと甘えるように笑う。
その仕草が可愛くて、獄寺はツナに囁く
「消えたんじゃないですよ、燃えたんです」
流れ星は消えたのではなく、夜空を閃光のように一瞬だけ、ほんの一瞬だけ照らして、地球の大気で分子と衝突して燃えるのだ。
その一瞬の輝きをツナは捉え、獄寺に伝えた。それが獄寺は奇跡のようで嬉しかった。
でもツナは
「違うよ、消えたんだ」
と笑うのだ。
「消えたんだ」
伏せた瞳に一瞬の閃光を思い浮かべる。
その瞳がまるで淡い、ゆらめく炎のようで、
あぁ、消えてしまうのはこの人なのだ
と獄寺は心を痛めた。
消えてしまわないで、そう祈るように獄寺はツナの黄色の髪にキスをおとした。
「あなたが消えてしまったら、俺は・・・」
絞り出すような声が暗闇にポツリと溶けていった。
ツナはただ、笑っていた。