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□ふたり
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獄寺は中学生のとき、
ただあの方が幸せであればいいとか、ボスとして皆に愛され認められればいいとか、そんなあまっちょろいことを思ってた。
それを思う自分にも誇りをもっていた。
高校生にあがり、獄寺の敬愛するボス、沢田綱吉はとくに目立って身長が伸びるわけでもなく大人びるわけでもなく、線の細い印象の高校生に成長した。
ただその小さく細い体は、イタリアという国の将来を背負っていた。
その前に獄寺という大型犬の愛情も背負っていたのだ。
そしてツナも獄寺を好きだった。
「イタリアって綺麗な国だね…!」
「そうですね、綺麗です!ご飯も美味い!」
二人は獄寺の家でイタリアの写真集を見ていた。
写真集は色とりどりにイタリア中の芸術品や建築物や風景が載っており、ツナが手を止めた写真のところを獄寺が説明したりして、二人は時間を過ごしていた。
「ここは夏に行くと、とても綺麗です!花が咲き誇ってて…」
「そうなんだ!イタリアの花は派手そうだね〜」
「日本の花は奥ゆかしい綺麗さですもんね…桜とか外人好きですよ!!」
写真集をめくるツナをニコニコとしながら見つめ、相槌をうつ。
相槌をうつだけじゃなく愛も囁きたい。
ついでに不埒なことも考えてもいたりした。
未来のイタリアのマフィアのボスである10代目は獄寺の恋人だから、いやらしいことを考えても仕方無い…のだ。のだろう。たぶん。
「でも今は我慢のとき…」
「え?」
「うわっ!いやっなんも!!!」
口に出していたのかツナが不思議そうに、怪しい人を見るかのような目をしている。
「やっ!マジでなんでもないです!!」
ひっひいてらっしゃる〜〜〜!!!
中学時代に培ったツナへの知識で獄寺は昔よりほんの少し臆病になっていた。
ツナが些細なことで怒ったりするようなつまらない男ではないことを獄寺はきちんと知っている。
でもそれ以上に恥ずかしがりなことも知っていた。
一度キスをしたとき、もちろんきちんと許可をとりお互いに向き合って口を合わせたとき、真っ赤な顔をしたツナが、しばらく口を聞いてくれなかったのだ。
それはツナが照れ屋故のことだと獄寺はちゃんと分かっている。
でも、だからこそツナには恥ずかしい思いをさせたくないと我慢をしているのだ。
いつかツナから求めてくれるのを待っている…
二人は全く進展などしてはいないのだ。