小説

□ガラスの結婚
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 春たけなわの頃、満開の花々に祝福されるように、金の髪のパルシア王国第二王女ユリカは、婚約者であるナキクア王国ラーシャ王と結婚式を挙げた。

 国中の祝福を受け、左手の薬指に透明な石を嵌められた指輪を光と共に振りながら、たくさんの歓声と投げられる花びらに応えたその夜、ユリカはついにたまらず大声で叫んだ。

「どういうことよ!」

両国の代表が集った豪華な式を挙げ、贅をこらした料理と妙なる音楽で彩られたパーティは無事進み、やがてユリカは侍女に連れられてこの夫婦の寝室へと案内されたのだ。

 レースと刺繍で彩られたドレスから透けるような白い夜着に着替え、ベッドのある部屋に一人残されて、既に四時間。

 時計の針はとうに真夜中を回り、周囲はしんと音もない。

 王宮全体が、まるで寝静まったように静かだ。

「それなのに……」

――どうして夫のラーシャが来ないのよ!?

確かに婚約者など名ばかりで、肖像画でしか知らなかったが、それでも結婚を夢見て楽しみにしていたのだ。

――それなのに、まさか初夜からシカトされるなんて!

予想もしなかった屈辱に、ユリカは思わず結婚指輪の嵌った左手でベッドのシーツを握り締めた。

――そりゃあ、ラーシャ王が結婚に乗り気でなかったのは知っているわよ!?

けれども三年前この国の前王が戦争で負けたことにより、大国によるナキクア王国への侵略を恐れたユリカの故国が、いわばごり押しで政略結婚を進めたのだと聞いている。

――だからって、こんな無視しなくてもいいでしょう!

 知らない人ばかりの国の王妃――それでも良い妻になろうと思って、三年前縁談が出てから、毎日言葉の勉強もしたし、マナーもダンスも楽器も人並み以上に頑張ってきたのだ。

 それら全部が一人相撲だったのだと思うと、悔しくて情けなくなってくる。

 思わずユリカはぎゅっとシーツを固く握りこんだ。
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