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□君の声。
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近くに雷鳴を聞く。
次に瞼の奥が一回、二回と痙攣し、いよいよ覚醒が近いことを俺に教えた。
「…なんか、カミナリの音すげぇデカくないかエース?」
珍しく先に起きたらしい弟が不安げに呟く。
よく耳をすませば、雨と風の音がごうごうと混ざって聞こえる。
「…なんだ、おっかねぇのか?」
「おっかなくなんかねぇもん。」
「どーだか。ヘソとられんなよ。」
「ヘソとるのか!?」
慌てて布団を手繰り寄せる音を背中に聞いて、少し笑った。
互いに布団から出る気はまだない。
最近は朝から寒い日が多いので、こうやってしばらくは布団の中で過ごす事も増えた。俺もルフィも基本的にだらしないから、サボがいないと生活が知らず知らずに乱れる。
「…なぁ…エース腹減った…」
「お前なぁ…あれ?まだ6時にもなってねぇのか?」
時計を見るために両手を突っ張り上体を起こす。
それでも見えなくてそこからさらに背中を反らす。
「シャチホコだ!」
「うっせぇ。」」
「まだ6時にもなってないぞ。いつもより早いくらいだな!」
よく見ると本当に6時前だ。
「…自分の腹に言ってやれよ。」
呆れながら見やるが、当の本人は満面の笑顔でこちらを見上げるだけ。
そして俺は
「…はぁ。」
弟の、ある意味『得意顔』でもあるそれに何も言えなくなってしまう。
サボなら笑ったんだろうか。
「…エース?」
「……」
「なぁエース…」
「…寝る!」
「えー!何だよエースまた寝るのか!?」大きな声を無視して布団を頭から被った。
「エース!!」
「うるせぇ!飯ならてめぇでなんとかしろ!」
引き剥がされそうになる布団を死守する。ルフィは腹が減って仕方がないのだろうが、俺は自分が今変な顔をしてないか気になってそれどころじゃない。
きっと朝だからだ。
そう思いたいんだ俺は。
サボがいない朝に
俺はまだ慣れない。