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□二人、時々独り
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「…ス」






…?


「エ……ースー…!」

…何だなんだ。







今、なんか…



「おーい!!エース〜!!」

特有の高い声に眉をしかめた。


ムクリと起き上がり下を覗き込むと、ちぎれそうな程に腕を振り、俺を呼ぶルフィがいた。


「エース!!」


「…おぅ…」
かくれんぼをしていて、鬼に見つかってしまった感覚になる。





逃げながらも、心の中のどこかで待ち望んでいたような。



「…なんだ、機嫌良くなったのかー?」

木の上から、からかうように問いかけるがルフィは瞬きすらせず、じっと俺を見つめていた。


「何言ってんだかわかんねぇ!でもおれはエースの事食ったりしないから、心配することないぞ!!」

お前が何言ってんのかわからないぞ。
と胸の中。


それを口にしなかったのには、訳がある。「お前…それ…」


ルフィの小さな右手に、羽が握られていた。
鳥の羽ではない。
この島では珍しくも何ともない少し大きめの蝶。
この間、ちゃんと捕まえ方を教えてやったばっかりなのに。

「そんな風に握ったら…ほら、見てみろ。もう飛べねぇぞそいつ。」
無惨にも千切れた羽が一片落ちた。



「もう死んでた。」






赤と青が混じる、綺麗な羽。

「クモに、やられちまったんだ!!」

「…おぃ…?」
顔を歪めたルフィは今にも泣き出しそうだ。


変な焦燥感が俺を襲う。
理由はわからないけど、ルフィが傷ついているのを感じた。




「待て、今降りる!」
「ごめんエース!」
「…!?」


「おれ、エースのこと…っ」
息を切らしながら必死に叫ぶルフィに、俺は何も言えずにいた。


ただ足が動かなかった。
今ルフィを視界から外すのは不安で仕方がなかった。



泣かないでくれ、と願った。


「エースの…ことぉ…」






「殺したりしねぇ…!!」























『…ーと…だから、よ。そうだ、蜘蛛の巣に引っ掛かった虫、見たことあんだろ?』







『お前に急にひっつかまれると、俺はあの虫になっちまった気になるんだよ。』




『身動きとれなくて、』



『…すごく驚く。』
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