過去拍手

□Have a happy X'mas!
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「ホワイトクリスマスですよっ!」

エプロンを着ながら、遥ちゃんが小走りで店内へ来た。

今日は12月25日。世間はクリスマスで盛り上がっている中、俺と遥ちゃん、そして橋本さんの三人はパン屋で働いていた。

「あれ?佐伯先輩は?」
「佐伯くんなら正面口のほうにいるわ。ケーキ販売のお手伝いですって」
「じゃあ私たちでこっちは頑張りましょう!」

そう、俺はいつものパン販売ではなく、今日は特別に外でケーキを売っている。

簡易なテントではあるものの、雪はしのげるしストーブもあるから居心地は悪くない。

「これひとつ頂戴」
「はい!」

客足も上々で、売り始めた午後4時から今の7時まででケーキは殆ど売れていった。

最初こそ三人がかりで忙しなく販売していはいたが、今は一人で十分なので俺が担当している。

(綺麗だなあ)

真っ暗な駐車場を照らすスーパーの明かりに、降り始めた雪がキラキラと反射されている。それがとても神秘的で、何より綺麗だった。

(…尾西さん、仕事してんのかな)

暇になった頭で考えるのは尾西のこと。
しかし『クリスマスは仕事だ』と言って俺の誘いを断ったことを思い出し、俺はちょっとしょんぼりした。

そりゃあ、仕事のほうが大切なのは百も承知だけどさ、なんて。

「あの…まだケーキ残ってます?」
「…」
「大丈夫ですか?」
「あっ!はい!ケーキですね」

気づかぬうちにぼーっとしてしまっていたらしい。
お客様が心配そうに顔を覗き込んでいた。

「じゃあひとつ」
「はい!」

慌てて、でも崩さないようにケーキを差し出せば、目の前の女性がふふふと笑いながら受け取った。

「ありがとう。サンタの格好、とても似合ってるわよ。」
「え、あ、ありがとうございます」

ばっちり目があったその人はめちゃくちゃ美人で、先程から不意をつかれてばかりの俺はきっと今顔が真っ赤だろう。

嫌ですと言ったのに着せられてしまったサンタの格好を褒められるのは恥ずかしい。

店長め…!

なんて思っていたら、ケーキが残りひとつになった。

これを売れば俺の仕事はおしまい。
時刻は8時を回っていて、雪は強さを増して降り続けていた。

−−−売れない、なあ。
最後のひとつがどうしても売れない。

「お前も一人か、俺と一緒だな」

なんて、ケーキに話し掛けていると。

「今日は寒いな」
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