しがないバイトです。

□第三章
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***

「…ってことでさ」
「はあ?ってことはつまり鬼も来るってことか?」
「うん」
「チッ」

川田は綺麗な舌打ちをするなあ。
寝起きのぼーっとした頭のまま連れて来られたkitchen strawの店内を見回す。

俺がずっと憧れていたバイキング専門店。
内装は思っていたよりもずっと広く綺麗で、店内にはいい香りが漂っている。

「よっしゃ、今日は腹一杯食うぞ!」
「おう」

勢いよく椅子から立ち上がる、と、思い切りバランスを崩し背中から倒れそうになってしまった。

「っぶねえな」
「わり!」

そっと背中を支えてくれる手。
やっぱり、川田が触ったときは恥ずかしくない。
(なんなんだよもう…)

まあ、お腹減ったしな!
ぶんぶんと頭を振り余計な思考を飛ばす。

「悠兎、これ食う?」

好きなだけ盛りつけて席に戻ると、差し出されたパフェ。

「初っ端からデザートかよ」

飽きれ気味に言う。

「うん、持ってきたはいいけど食う気が起きなくてさ、悠兎食ってよ」
「しょうがないな」

川田から渡されたそれを一口口に運ぶ。
口の中に広がる濃厚でちょっぴり酸味のきいたイチゴムース…

「うまい?」
「超うまい!」
「良かった良かった」

ニヤニヤと笑う川田を不気味に思いながらも、俺はパフェをあっという間に平らげた。

たくさんの食事を机に運び、少しずつ食べていると、ふと店員が近寄ってきた。

「お客様、申し訳ありません。ただいま店内が満席となっており、こちらは4人掛けの席となっておりますので相席をお願いしたいのですが…よろしいでしょうか?」
「いいですよ。な」
「うん」

俺も川田もそういうのは気にしないので、快く了承した。
美味しいものは大勢で食べるに限る。

店員は笑顔でお礼を言うと、小走りでお客様を呼びに言った。

「それではお客様、こちらでございます」
「ああ、すまない」

不意に耳に届く聞き覚えのある声。

「おいおいやめてくれよ…!」

川田も気づいたらしい。それもそうだ、だってこの声は、

「お前らか。奇遇だな」

あからさまな口調。
そこにいたのは尾西と知らない男性だった。

「…どうも」

俺と川田は向かい合って座っていたから、俺の隣には尾西、川田の隣には知らない男性が座った。

…まあ、見ず知らずの人と食べるよりはいいよ、な。
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