Here you are!

□Naked
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舞台中は一滴も飲まなかった酒も少しに留め、深夜を回って解放されたオレはマネージャーに連れられて自分のマンションに戻ってきた。

ピークだった疲れのせいでベッドに滑り込み泥の様に寝たお陰で、朝の目覚めは爽快だった。
一仕事終え、ゆっくり出来るかと思えばそうでもない。午前中早急に舞台関係者に挨拶回り、感謝と次へのコネクション作り。このフットワークがここ芸能界では重要で、休んでる暇など無い…
舞台に携わったスポンサーも含め全ての挨拶を終えたと思えば来年1月期のドラマの打ち合わせ…台場に行ったついでに湾岸スタジオで撮影中の執事を見たかったが…お嬢様とイチャイチャしてたらそれこそオレの捻れた欲望が暴走しそうだったので我慢した。
そういや謎Dチーム vs 嵐の時は妙にリーダーが張り切ってて驚いた。何であんなにやる気になってるのかニノに聞いたら「執事とお嬢様がイチャコラしてっからじゃない?」と言っていた…
リーダーの好みが北川景子だと知らなかった、と言ったらニノに「潤くん、マジボケ?天然?そんな鋭い顔してんのに?」と言われた…
アイツ時々かなり失礼だ!

それから、知ってか知らずか、車に乗り込む時マネージャーが「いいんすか?櫻井さんに会ってかなくて」と無神経にも言って来たのでオレはそれをマネージャーの首にチョップする事で受け流した。

それでも最近ではかなり早めの時間にその日のスケジュールを終える事が出来たので、オレのマンション近くのスーパーに送ってもらい、長かった今年の舞台の仕事がやっと終わった…と実感した。

夕方の忙しないスーパーを自炊しない翔くんの家の冷蔵庫、きっと空っぽだろうと予想しながら買い出しを済ませタクシーに乗り込み翔くんのマンションへと帰って来たら7時を過ぎていた。

二ヶ月ぶりの翔くん家は……
見事に荒れていた…

翔くんの部屋が汚いのは有名な話…今更驚きもしないが…オレが来ないだけでこれだけ荒れるとは…

とりあえず、料理の下ごしらえを済ませ、それから食洗機の皿を棚に移しキッチンのシンクに放置されたカップやグラスを食洗機に入れた。
それから室内の片付けに入る。
読み散らかした無数の新聞紙…広げた新聞紙の上にまた新聞紙なんてざらで…ちょっと引く…
脱ぎ散らかしたのか、洗い散らかしたのか…洗濯物がソファの端に同じ様に積まれていて…これもまた引く…
寝室にはこれまた脱ぎ散らかしたであろうTシャツやスエット…


「ったく…翔くん…」


忙しい、確かに嵐一忙しい。
普通に撮影が入ってなくても司会業、キャスターと忙しさはズバ抜けてるのに…ここの所ドラマ映画の需要はオレより多いかもしれない。
それに音楽の仕事も入ってきては…頭も体もパンクするだろうな…


「一緒に暮らす?」


動かしていた手を休め呟いてみるが、絶対叶わない夢だと頭を振る。
どんな理由をつけようと、事務所は決して了承しないだろう。
どれだけ事務所に力があっても火の無い所に煙は立たない。マスコミに餌をやる必要は無い。危険因子を出来るだけ排除するのが事務所の仕事…

特にオレと翔くんは…
Jr.時代の蜜月、デビュー後の離別、そして最近歩み寄りつつある関係性に在らぬ想像を掻き立てる要素がある様で…
時々ニノが「ほら、バレてるよ」と掲示板の書き込みなんかを見せてくる。
逆手に取るのが得策だよ、なんて楽しそうに笑うけど…メンタル弱っちいオレは多少考えてしまったり…
そんな悩みを吐露すれば翔くんの返事は「じゃあどうするの?別れる?」と言う話になる。
別れるなんて、それこそ不可能だ。

『庭付き一軒家に大きな犬』

翔くんの夢さえ叶えてやれそうにない自分の立場に不甲斐なく思うのは…本当毎度の事…

オレは再び散らかった衣類を拾い上げてゆく。


「同じマンション内ってのは…可能…?……無理か……同棲と大して差はないもんな…」


でも…チラッと翔くんに言ってみようか…
同棲…
マンション内同棲…
車で5分、歩いて15分の距離のもどかしさ。
同じベッドで寝れなくても、せめて飯だけは一緒にとれる環境にしたい。
風邪を引いて辛そうな翔くんを見て特にそう思った。

キッチンの圧力鍋から空気が抜け重りが落ちる音がした。
スペアリブが柔らかくなっていたら、野菜を入れコンソメスープで味付けをする。
大根、蕪、人参、ジャガイモ、ブロッコリー、身体を温める根菜の洋風おでん…食べる時にマスタードを添えて…ポトフに近い優しい味のスープ、翔くん喜んでくれるだろうか…と壁掛け時計を見上げると、既に8時半を回っていた…



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