Here you are!

□together, forever
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翔くんが風邪ひいた。

バラエティー収録の日楽屋に行ったら約一名楽屋が別部屋になっていた。


「松潤、翔ちゃん風邪で熱あるみたい、メンカイシャゼツだって」


一番乗りの相葉くんが教えてくれた。


「面会謝絶って…何で?」


「感染したら困るからってマネージャーに頼んだみたい、ほら、松潤舞台だし、リーダー映画の番宣で忙しいから…」


「相葉さん顔見た?」


「ソコで地団駄踏んで半べそかいたけど絶対ダメって翔ちゃんに怒られた…」


しゅーんって音がしそうな位相葉くんが小さくなっている…
う〜ん…顔に似合わずあの頑固者は…そう、と決めたらガンとして曲げないからな…困ったもんだ…だが、こっちも頑固さは負けてない。
こんな時に何も出来ないなんて恋人として悲しすぎる。
こう言う時は…


「相葉さん、悪いけど二人っきりにしてよ、カズやリーダー来ても入れないで」


「どーするの?」


「強行突破」


と、一言残して『嵐様控え室』と書かれてある楽屋を出た。
ドアが閉まる瞬間相葉さんが「カッコイイ松潤!」と言っていた声が聞こえたが…
この見た目をフルに使わないでどーする?ってなもんだ。
何も書かれていない隣の楽屋、鍵が掛かってるかな…と静かにドアノブを回すと、すんなりとドアは開いた。
畳の敷かれた楽屋の一番奥に仮眠用布団にくるまって背を向ける大切な人を見つける。
静かにショートブーツを脱ぎ、音をさせないように歩いて寝ている人を上から覗くと堅く目を瞑り何かに耐えている様な顔をしていた…


「寒いの?」


「わ!バカ!松潤!何でここにいる!?」


「何でって…鍵開いてたし…」


「マネいなかった?」


「いなかったね」


「クソ!!役立たず!」


翔くんは吐き捨てるように言った。それでも具合の悪さは否めない…いつもの元気も無く、すぐに布団にくるまり丸く縮こまった。


「松潤…頼むから…向こう行って…オレ…絶対嫌…」


「行くよ、もちろん…アナタがどんな気持ちでそう言ってるのか承知してるから…でも、どんな様子か位は聞かせてくれても良いでしょ?」


そう言ってオレは布団の中でミノ虫みたいに丸くなる恋人の横に腰を下ろした。


「寒いの?」


答えてもらえなかった質問をもう一度投げ掛ける。


「ゾクゾクしてる…」


あ〜あ…熱の上がり始め、寒さと節々の痛み…頭の痛み…


「薬は?病院行った?」


「行った…でっかい注射…一本打ってもらった…」


抗生剤と栄養剤入りの…ぶっといヤツだ…あれは確かに効くんだけど…それは打った後しっかり休む事によって効力を発揮するのであって、こんな埃っぽい楽屋の、何年天日干ししてない様な布団の中じゃ…
効果もへったくれもあったもんじゃ無い…


「しっかり食べてる?太るの気にして…あんま食べて無いんでしょ…」


「食ってるよ…って言うか…原因はお前にもある…あの日…香水くれた…あの日!」


少し言い澱む翔くんは『あの日』の事を思い出しているからだろう…『あの日…』


「夏でも無いのに…パンツ履くの忘れて…朝、下半身丸出しだったんだから…」


「それオレせい?それにもう何日も前の事じゃん」


「あの日から…少し喉が痛かったんだ…」


「……とりあえず…そう言うんなら謝るよ…ごめん」


でも、違う…それだけじゃない…元々料理も出来ないし…ロケ弁、楽屋弁、出前、外食中心の人が…最近当たり前の様にオレの飯を食ってた訳で…
そりゃ栄養士程知識がある訳じゃないけど、季節の物、地産地消、出来るだけ関東近郊の地の物を食べる様にしているオレなりの栄養管理…
翔くんだけが忙しいのならオレだって飯位作っておいて気遣ってあげられるけど、今はオレも舞台で余裕が無い。

ちょっと前は、弁当が当たり前だったけど、やっぱり身体は良い状態に浸かってると良い状態を求めるんだ…
その上ハードスケジュール、寝不足…
ガス欠になるのは当然だ…


「あ〜あ…福くんに感染したらどうしょう…」


こんな時でもゲストを気にかける…確かに福くんもドラマ撮影中…気の抜けない状況だけど…


「子供のが体調管理万全なんじゃない?親の愛って半端無いから…」


「親の愛…ね…」


五年前…蜷川さんの舞台に出た時、千秋楽三日前…オレは発声の無理がたたり声を枯らしてしまった…
もちろん風邪では無かったのだけど…その気もあったのかもしれない…
そんな事もあったから、この人はオレに喉ケアグッズを探してきてくれて、アイバチャンのど飴も大量に手渡されていた。
気遣って思いやってくれて…
その上苦しくて辛いのに近づくな!とまで言ってオレの事を気にかけてくれる。
親の愛…に負けない…恋人への愛…

オレはこの布団にくるまるミノ虫に何が出来る?
何をしてやれる?

オレは背中を向けて丸まるミノ虫の肩にそっと手を置いた。



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