Here you are!
□Shake it !
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「復興支援?」
「そうそう、オレなりのね」
酒飲みの恋人が嬉しそうに言った。
「昨日届いたから、今夜持ってくわ」
それは、オレの所で酒盛りをしよう、だからツマミをヨロシクという暗黙の命令。
いいけど。
いや、むしろ嬉しいけど。
何を作ってやろうか、何が喜ぶか、一緒に何をして楽しむか、何をすれば笑って、その笑顔を見せてくれるか。
考えるだけでワクワクする位オレはこの年上の恋人が好きで好きで仕方が無い。
ハッキリ言って完全にオレは骨抜き状態。
この人の為なら何だってしてやりたい。
ちょっとキツくても、辛くても、無理してでも、背伸びしてでも、頑張れちゃう自分がいる。
その頑張れちゃうオレも嫌いじゃない。
何より、最近気付いたんだけど、その頑張っちゃうオレを翔くんは可愛いって思ってくれている様だ。
何だかバカップル丸出し?
良いんだ!翔くんとならバカでもアホでも…
Crazy for you .
すでに気が狂う位あの人に惚れてんだから。
今年の夏は、そんな夏を過ごしてる。
オレは携帯のロックを解除し、google検索の画面を開いた。
この時期日本酒に合う肴って何だ?
予め何を作るか、何を買って行くべきか、リサーチする為に料理サイトを開くと、並ぶ食材に胸が踊る。
鰻、鰹、鱧、トマト、茄子、きゅうり、ズッキーニ、枝豆、茶豆、パプリカ、トウモロコシ…
夏ってスゲーな、色鮮やかで、味の凝縮された野菜だらけだ。
音声検索の画面に戻し一人携帯に向かって喋る。
「鰹のたたきの作り方」
ピコっと電子音がして、携帯の画面いっぱいに検索結果が広がる。
玉ねぎ、万能ねぎ、にんにく、しょうが、大葉、鰹
日本酒には、やっぱり魚だよな。
あっ!あの人、飲んだ後ゼッテー炭水化物食いたがる!
再び音声検索の画面を開き携帯に向かって口を開いた。
「鰻のちらし寿司の作り方」
スーパーで買う鰻だけど、ちらし寿司にすれば美味く食えるかな…
もうすぐツアーも始まるし、土用の丑の日に鰻が食えるか分かんないから。
夏に一回は鰻食っとかないと。
山椒の実の佃煮、木ノ芽、シソ、錦糸卵、白米、鰻
他は…
そういや、もうそろそろスイカとか桃の季節だ。
美味しい物を嬉しそうに頬張る翔くんは、本当に幸せそうで、可愛くて、その顔が見たいって、心底思った。
スッゲー楽しみ。
オレは誰にも気づかれないように小さく笑う。
翔くん、アンタって本当すごいよ。
翔くんがうちに来て一緒に酒が飲めるってだけで、こんなにもオレが幸せになれるんだから。
アンタの存在がオレを優しく、柔らかく、
何だか本来の自分に戻れるようで、とても楽にさせてくれる。
愛してる…
アンタに染まって、アンタで埋め尽くされて、アンタに侵食されまくって…
オレなんて消えてしまったって良い位好き。
アンタが隣にいてくれる、それだけで本当に幸せ。
オレはまた一人下を向いて笑う。
これが終わったらスーパー直行だ!
オレは衣装のジャケットを羽織りスックと立ち上がると、スタッフに声をかける。
「いつでも準備OK です!」
自然と緩む頬をそのままにオレはスタッフたちに笑いかけた。
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