Here you are!

□Naked
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その夜翔くんが帰って来たのは深夜を回る頃だった。

「おかえり」と言うと照れたように「ただいま」と返してくれた。
二日間降った冷たい雨は翔くんが帰って来た頃には止み、代わりにとても強い風が吹いていて、翔くんの顔は外の寒さにさらされて鼻先が少し赤くなっていた。


「悪い、遅くなって…いよいよ追い上げで忙しくなってきた」


「大丈夫だよ、亀見て、しやがれ!見て風呂入ってたから…翔くんご飯食べる?それとも風呂…?」


新妻の常套句に自分の頬が熱くなるのを感じ、それを隠す様にソファから立ち上がる…ここで『お前』なんて言われたら…照れとか恥ずかしいとかなぎ倒してその場で押し倒す方に五千点…


「それさ、もう一つの選択肢は無いの?」


「は…?」


翔くんの頭の中もオレと同じ事を考えていたようで…だけどそれを口にするのは激しい羞恥だ。


「…そ…」


「そ?」


「…い…言えねぇ…」


オレは両手で顔を覆いその場でヤンキー座りをした。『それともオレ?』なんて…言えねぇよ…
翔くんはハハハと笑いながらオレの傍まで来て、オレと同じ様にヤンキー座りをした。


「相葉くんならその気満々で、言いそうだけど…オレも言えねぇや」


目尻を垂らし唇を緩めて微笑む翔くんは多少の疲れの色を見せながらも…穏やかで美しく優しい……
その美しさに眉根を寄せ、瞳を細め食い入る様に見つめながら呟いた…


「翔くん…翔くんも…したかったの?」


翔くんは顔を一気に赤くさせてから直ぐ様俯いて…それからゆっくり間合いを取って言った。


「飯より風呂より…お前が良い…」


翔くんの170%の勇気はオレの心を熱くさせ、前のめりにヤンキー座りを崩して翔くんを抱きしめた。

4日ぶりに抱きしめる翔くんの身体から、ブルガリブループールオム…オレの香水の香りが微かに鼻腔を通り、オレの心を締め付ける…

変わらず細い肩…薄くついている背中の筋肉、肩甲骨をシャツとウールセーターの上からなぞり、その下に隠れている肌を想像すると一気に体温が上がる。
翔くんの意外に男らしく力強い腕と指が抱きしめた腕の間でモゾモゾ動き羽織っていたニットカーディガンの釦を外してゆく。
そのままオレのパジャマの裾から指が入り込みわき腹、胸、脇の下、鎖骨、肩をなぞったかと思えば動きがピタッと止まる。
突然動かなくなった翔くんに、どうしたのかと密着した身体を起こそうとしたら、勢い良く翔くんの両手がオレのパジャマから引き抜かれそのまま身体が引き離された。


「や、や、や……やっぱ風呂!」


叫ぶと同時に弾丸の如く立ち上がりバタバタとバスルームに飛び込んで行く翔くんに…何が起きたのか…オレは追うようにバスルームに駆けて行くと「来るな!」と牽制される。
いや、翔くん嫌がるから…風呂までついて行かないけど、その気になってたのがいきなり逃げられると…何かしてしまったのか展開が早過ぎて不安になる。


「な…何?翔くん!オレ…何かした?」


バスルームを隔てる曇りガラス越しに翔くんに問いただすと翔くんは思いがけない言葉を返した。


「お前の身体、エロすぎ!腰はそんなに細いのに…何その胸板!上腕筋!また筋肉ついただろ!」


「……そりゃ…鍛え続けたから…」


何を今更…?
衣装着替える時も、舞台見に来てくれた時も、上半身なんか曝していたじゃん…見てたでしょ?
あっ…ますます雄っぽい身体になって気持ち悪いのかな…そりゃ男同士でセックスする訳で…翔くんは女の方が良い人種…こんな厳つくなった男に抱かれるのは…確かに引くかもな…


「松潤!風呂で…気持ち落ち着かせてから行くから!ま…待ってろ!」


「落ち着かせるって…そうまでしなきゃ…ダメなの?」


ショックだ〜…
フラフラとバスルームからキッチンへ行き冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し口に含む…ゆっくりとそれを飲み込むと冷たい液体が食道の位置を知らせながら流れて行った…

自分が女だったらって何度想像したか分からない…
料理を作って洗濯掃除をして…翔くんの事を毎日考えながら翔くんの帰りを待つ…
オレ…翔くんに対してはかなり一途だし、翔くん喜ばせる為なら何だってやれる自信ある。ベッドだって奉仕を待つなんて絶対しない。テクニック磨いて飽きさせない様にこっちが奉仕しまくって…
浮気は絶対嫌だけど、仕事への理解とか、例え結婚記念日、誕生日、その他記念日が月曜日に当たっても絶対文句言わないぜ?だってキャスターやってる翔くんがオレの一番大好きな翔くんな訳だし…
かなり良い奥さんになれると思うけど…オレ…

軽くため息を吐いてからキッチンの電気を消す。
そのままリビングに置いてあった携帯と読みかけの本を持ち電気を消しベッドルームへ行く。

バスルームからは心地良い水の流れる音…

どう足掻いても女にはなれないオレの…白昼夢…せめてオレがもう少し女の様な見てくれだったら違ったのかも…

考えても答えの無いオレの夢…またため息を吐いてからベッドに腰を下ろした…



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