短編

□聖なる夜のプレゼント
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「もうすぐクリスマスだねえ」

降り続ける真っ白な雪を暖かい部屋の中から眺めながらぽつりと呟いた。
後ろのソファーに座って新聞を読んでいたジェイドが振り返る。

「クリスマス、ですか?」
「え?ああ、そうか。こっちの世界にキリストはいないんだもんね。クリスマスがないのも当然か」

納得してジェイドの隣に座る。
この世界に来てからは戸惑うことばかりだったけど、ジェイドのおかげで今は普通の生活を送れていた。
でもたまに、こうやって私の世界のことが、ぽろっと出てきてしまうのだ。

「キリストとはなんなのですか?」
「うーん、神様?私もよく知らないや」
「クリスマスとキリストにはどのような関係が?」
「気になるの?」
「ええ。あなたのいた世界には興味がありますねえ」

新聞を机に置いて私を見たジェイドに思わず、少しだけあった隙間を埋める。

「クリスマスはキリストの誕生日だよ。みんなでプレゼント交換をしたり、ケーキを作るの!」
「わざわざよく知らない人の誕生日を祝うのですか?」
「イベントだからいいの。それからね、ヤドリギの下にいる男女はキスするの!」
「変わった風習ですねえ」

私の頭を優しく撫でるジェイドに飛び付いて、そっと唇を重ねた。

「ヤドリギはありませんよ」
「いいの。クリスマスなんてただのイベントなんだから」

今度はジェイドから口づけて、見つめ合った。

「ねえ、プレゼントは何がいい?」

ジェイドの首に腕を回して聞いた。

「あなたがいればそれだけで十分ですよ」

よくもそんな恥ずかしい言葉が言えたものだ。

「恥ずかしくないの?」
「恥ずかしかったら言いませんよ」

手を、と言われて右手を差し出せば、逆ですと左手を取られた。

「私からのクリスマスプレゼントです」

指に冷たい感触がして、見れば薬指がきらきらと光っていた。

「え、あの、これって……」
「結婚しましょう」

優しく笑ったジェイドに苦しいくらいに抱きつけば、耳元で

「愛していますよ」

なんて言うから耳まで真っ赤になって、危うく涙が出そうになった。

聖なる夜のプレゼント
(サンタクロースって本当にいるのかもね)
(サンタクロース、ですか?)

12/07/12

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