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□嫌いだなんて言わないで
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「……俺っ、もう どうしたらいいんでしょうか…っ」
「お…おい、泣くなって;;」
あまり人にも迷惑をかけたくないから、誰にも言わずに考え込んで
情けないことに、考え込みすぎて涙が出てきて
結局今、結果として綱海さんを困らせている。
その事実に更に涙は溢れる。
なんて悪循環だ。
「俺…、みんなに 頼りすぎてて…っ、一人じゃ技の、習得も出来なくてっ…。 みんなの練習時間も…削ってしまうしっ…、なのに、…自信が、つかなくて…っ。」
泣いた勢いで、心の内を明かす。
だけどまだ全部じゃない。
「……はぁっ…キーパー、として…ゴールを守らなきゃ、っ…いけないのに 円堂さんとの、差に……目を向けたくなくて、逃げてしまう…………そんな、そんな自分が嫌で嫌で仕方無いんです!俺なんてもう、…………このチームに、必要ないんですよ…。此処には、円堂さんっていう、凄い人が居るんですから……。」
全部全部弱い自分が悪いのに
こんな言い方じゃまるで円堂さんが悪いみたいだ。
そう思ったけど、もう言ってしまったあとだから遅かった。
「そうだな…確かに、お前の言うとおり、キーパーには一人しかつけないし、よりによってその位置を円堂と奪い合う…っつったらアレだけど…とにかくそういう風になるのは、めちゃくちゃ辛ぇと思う!でもな、だああああああれもお前のことを“必要ない”なんか思っちゃいねえぞ。」
そう言って綱海さんは、俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
心臓のあたりが、ちくっとするのを感じた。
本当に、綱海さんの言うとおり 誰も俺の事を“必要ない”と思っていないのかもしれない
なんて少し思ってしまった。
「お前…まだ“必要ない”って思われてるって思い込んでるだろ…? もし“必要ない”だなんて思ってたら、誰もお前の様子に気付かねえよ。」
気付いたのは綱海さんだけだ
そう思ってたのに
「どういう…ことですか?」
「みんなああ見えて気付いてたんだぜ。お前がヘコんでたことに。だから壁山も壁山なりにお前のこと心配してたし、木暮も言葉には出してなかったけど、此処に来たかったみたいだしな」
綱海さんによると、鬼道さんと豪炎寺さんも気付いてくれて、マネージャーたちに俺の分のご飯を、保温するように頼んでくれたらしいし
円堂さんも此処までご飯を運ぶって言ってたらしい(それは綱海さんが止めたみたいだけど)
あとでマネージャーが、俺の分のご飯が乗ったお盆を見ると、メニューにはなかったバナナが乗っていたらしい(不動さん・・・だろうな)
そんな風にして、気付いてくれた上に、俺なんかのためにチームのみんなが少しずつの心遣いをしてくれた。
このことは、俺の、悲しみで緩んでいた涙腺を、感動と嬉しさで緩ませるには充分すぎることだった。
「ありがとうございます!!!」
と言ったつもりだったのに、声がガラガラになって、鼻もすすってたから
聞こえたのかは分からないけど…。
「気にすんなって!俺たちは仲間なんだからよ!」
その言葉にも、優しさや思いやりの温もりがこもっていた。
「…はいっ……かはっ、あっ…ごほっ」
「おいおい!大丈夫かよ;;」
噎せた俺の背中を、綱海さんが抱き締めて手でさする。
かなり呼吸が楽になってきた。
だけど、ドキドキし始めた。
「もう無理して色々喋んなくていーから、気が済むまで存分泣け泣け!涙は何とかの何とかって言うだろ!」
ココロの汗ですよ
と、内心ツッコミを入れつつ
綱海さんの胸で思いっきり泣いた。
たった2歳しか年齢は変わらないし、もしかしたら似た悩みを抱えているかもしれないにも関わらず、綱海さんは泣いている俺を、何も言わずに包み込んでくれた。
「綱海さん…俺、…イナズマジャパンのメンバーで、よかった…です!!」
そう言う俺に、「俺もだぜ!」と、綱海さんは屈託の無い笑顔で返してくれた。
そして
「みんなそう思ってると思うぜ」
と言って俺を抱き締めたまま、床に倒れこんだ。
そのまま更に強く抱き締められて、心臓が口から出てしまいそうだった。
「つな、みさん…」
顔と顔、体と体、足と足、呼吸と呼吸、視線と視線…
何もかも近すぎて、体中が熱くなった。
「立向居、俺にはお前が必よ―」
ぐうううううううううう
綱海さんはついさっきまで真剣な眼差しだったのに、今は目が点だ。
「……ある意味でナイスタイミング、立向居…」
何だか申し訳なくなって、何も言えなかった。
「じゃあ 飯でも食いに行くか」
そう言って一つ
不意打ちのキスが降った。
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END
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