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□あつくてきもちいい…?
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流れとノリと成り行きから決まってしまった、チームメイト全員に矛先の向いたイタズラ。
まだ夕飯までは30分ほどある。
俺のプレテストは終わったから次は国宝ほっぺの番。
「立向居、お前もこの中入ってみるか?」
そう聞くと、国宝ほっぺは、目をキラキラさせて、また癒し系ボイスで“はい!”と返事をした。
しかし、勢いよく開けたクローゼットの中を見て、後輩はそれまでのキラキラを一変させた。
何だか少しがっかりしているようにも見える・・・?
「ど・・・どーしたんだよ立向居」
「え・・・その・・・」
何か言いたいことはあるようだが、口にはしようとしない。
多分、すっっっっげー可愛い理由。

「おいおいおいまさかここまで来てやめるだなんて言わないよなあ!」


「・・・・聞いたか鬼道」
「ああ。 立向居・・・今日は夕飯食えないだろうな」
綱海の部屋のドアに、耳をぴったりとくっつけている人物が二人。
練習が終わって、シャワーを浴びてきた風丸と、鬼道。
シャワー室から自室に戻る途中にこの部屋の前を通り、辛うじて聞こえた・・・いや、彼らからしたら、聞こえてしまった綱海の声。
恐らく室内はトンデモナイ状況なのだなということも二人は勝手に悟っている。
「・・・だとしたら、俺達がここに居座るのも立向居のプライバシーを侵害してしまう。だからそろそろ退散しよう」
「そうだな」
ひそひそ話は終了し、二人は静かにその場を去った。何も知らないことにして。

二人がその場を去った直後に、その部屋のドアは内側から開いた。
がっかりの理由を問い詰めたところ
結局
「もっともふもふのコートとかがいっぱいあるかと思ってたのに・・・ほとんど綱海さんの海パンじゃないですか・・・;;」
と答えられた。
俺はコートのもふもふよりお前のもふもふのほうが――おっとこれ以上考えると夕飯が食えなくなる。
照れ隠しに下を向いたり、横を向いたり。
かと思えば、文句を言うときには視線をこちらに向け、自然と上目づかいになったり。
くるくると泳ぎまくる視線を楽しみながら見ていると、そのふにふにの国宝ほっぺがふくらまされた。
「あーわかったわかった!でも俺コートとか二着ぐらいしか持ってきてねーからよ、あれだったらお前の持ってきてもいーぜ」
アタマの上で架空の豆電球が浮かんだので
それを後輩に伝えると“じゃあ、今から持ってきます!”と、また目をキラキラさせて、勢いよく部屋を飛び出して行った。
それから3分ぐらいすると、ミナミの後輩は両腕にもたくさん、頭にもたくさん、肩にもたくさん、コートを持って(?)来た。
オレンジ色でフードつき、フードには黄土色のもふもふ
他にも、もふもふまで真っ白なものから、フードがなくて、代わりに袖に黒いもふもふがあるもの、全体がもこもこ(と、見て分かる…でも多分ソレ女物…)な水色のものまで
コートがたくさん集まった
「よし、じゃあかけようぜ」
そう言って、開けっ放しだったクローゼットに大量のコートをかけていった(クローゼットがハンガーでかけるやつじゃなくてフック型でよかった・・・;;)
全部かけ終わると、すぐにもふもふはもふもふの中に勢いよく潜り込んで行こうとした。
が、あまりにもコートが多すぎてかさばってしまったため、ものすごくぎゅうぎゅうで入り辛いらしい。その俺より小さな体で必死にコートの群れを押して戦う。
その姿がなんだかものすごく微笑ましくて、思わず応援してしまった。

「頑張れよ!ここで終わりなんかねーからな!」
「は・・・・いッ!!!」


「・・・やっぱりそうなんだな・・・」
「ああ。やはり今日、立向居は夕飯が食えないんだろうな・・・。練習を頑張っているのに飯が食えないとなると、体調が心配になるな」
「そうだな・・・って冷静に考えている場合じゃないよ鬼道;;今は綱海を止めるのが先決だろ!」
再び、扉に片耳をくっつけてひそひそ話をしている人物が二人。
夕飯まではあと20分ほどあるが、立向居が心配になって、様子を盗み聞きに来たのだ。
「それにしても・・・一応、綱海って・・・っふふふ」
風丸が意味あり気に、声を殺しながら笑う。
鬼道はまだ風丸の言いたいことがよく分かっていないようで、風丸の笑い声が室内まで届いてしまわないかだけをただ心配していた。
10秒ぐらいか、笑い続けた風丸はようやく落ち着いた。
「何が面白かったんだ・・・;;」
「さっき聞かなかったのか?“頑張れ”って・・・ふふふふっ」
「・・・・ああ・・・意外に優しいんだな」
鬼道は微妙な苦笑いしか出来なかった。
(俺もたまにそうなんだ風丸っ;;)
「か、風丸 あまり笑いすぎると気付かれてしまう。もう一度戻らないか」
「あ・・・ああ。分かった」
二人が勝手に、現在室内で行われていると悟っている行為を、自分がしているときを思い出してしまって、羞恥でそこに居られなくなりそうな鬼道は色んな意味で、立向居に対して申し訳ない気持ちになった。
「俺がタックルでもしてやろうか?!」
と、笑いながらもふもふに言う。
もふもふがいいのなら、タックルというか、体当たりというか・・・ちょうどいいぐらいにぶつかって、イッツアミラクルな感じのアクシデントを起こして、ズキューン!な顔とかしてみて、ミナミの後輩のハートをズドォォオオオンと撃ち抜いて、その(略)してやりたかったけど
「い・・・いえ!綱海さんのタックル痛そうなので遠慮しときます!」
こんなにはっきり言われたらヘコむ以外できない
真剣なときのミナミの後輩は、結構言葉に気遣いが抜けてしまっている(まあそれもかわいーんだけど!)
3分ほどヘコんでいると、ようやく俺がヘコんでいることに気付いたもふもふは、「綱海さん?」と心配そうにきょとんとしてこっちを向いた。
わざとぷくーっと頬を膨らませて、言葉に応じない。
「え・・・えっと、俺 何か悪いことしちゃったならすみません・・・」
申し訳なさそうに、戸惑いながら謝ってくるので、許さないだとか、無視だとかは俺の良心が許さないので、もうちょっと戸惑ったりしてほしかったが、応答してやった。
「何でもねーよ だから早く行けよー!(クローゼットの方に)飯の時間来ちゃうぜ?」
「は、はい!!;;」
練習が終わったときよりも、空は大分暗くなっていた。

「・・・・どうしてまたここへ俺を連れてきた;;」
「どうしても止めないといけない気がするんだ」
三度目の盗み聞きに来た人物が二人・・・。
鬼道は先程の羞恥から、出来ればここに来たくはなかった。
が、風丸の素直な善意(立向居への)から、結局ここに連れてこられた。
「だって今聞いたか・・・?綱海のやつ、早くいけよなんて言ってたぞ もしかしたら軽い・・・うん」
風丸は言葉を濁した。

「は、入りました!!」
もふもふのクローゼットに激突し続け、約5分、やっとクローゼットへの突入を成功させたもふもふ特攻隊長。
「見てりゃ分かるっつーの。でもよかったな!」
寝ころんでいた体を起こして、胡坐をかいてもふもふにうずもれているもふもふを見る。(ぐふぁあもふもふ天国)
両者しばらく無言のままだった。なぜか。
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