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□あつくてきもちいい…?
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午後の練習が終わって
遠くに小さく見える海もだいだい色に染まり始めた。
練習メニューや、夕飯の献立によって違ってくるが、今日は夕飯まではあと40分ぐらいある。
その間にシャワーを浴びるやつも居れば、個人もしくはコンビ練習を続けるやつも居るし、部屋でゆっくりして疲れをとったり、仮眠のつもりが爆睡してしまったり………。
……そんな中“今日の練習は個人的に満足出来る内容だったな”と思った俺は、かわいい後輩をからかって遊ぶことにした。これは決定事項だ。(迷惑なんつーこと承知の上だけど、向こうも楽しそーだしいいや!!)

「立向居!」
個性的でかわいい、数多くの俺の後輩。
その中の一番のお気に入り(っつーと何か他のやつらに悪ぃけど)を呼ぶ。
はい! と、いつも通り後ろにびっくりマークがつくような勢い、でもどこかふにゃんとしたいわゆる癒し系な声で元気に返事をしてくれた。
今日のボール片付け担当(通称ボーたん…)は、一年生
その内の一人である癒し系は、片付けるはずのボールを三つ抱えたままぴょこぴょことこちらに走ってきた。
「おつかれっ!」
笑顔でそう言って、眼下のもふもふに、乱暴ながらも少しだけ指を絡める。
「綱海さんこそ、お疲れさまです!」
いきなりのし掛かった手の重みを一秒だけ受け取った
今、俺より少し低い目線は、しっかりこっちを指している。
いい意味で疲れたあと
こんなに空がきれいだと
自然と笑みも浮かぶわけで。
「あ、そういえば、俺に何か用があるんですか?」
忘れてた
もふもふから手を離し、その手ともう片方を自分の腰辺りに持っていき、お偉いさんのポーズ。
「なあ、俺の部屋で面白いことやるんだけどさ」
たいしたことではないが
多分、俺が一回してみて楽しかったから
このかわいい後輩にとっても、楽しいことだと思う。
「な…何をするんですか?」
興味だとか不安だとか、色々が混じった碧い目でこっちを見てくる
「気になるか?!」
「気になります!!」
即答。
ならば焦らしたくなるのが人の性!
でも今は時間がない
「じゃああとで俺の部屋に来いよ!教えてやっから!」
「はい!」

ボーたんの仕事を終わらせて、ジャージに着替えて、癒し系が俺の部屋に来るまでの時間は10分もなかった。
「綱海さん綱海さん!何なんですか面白いことって?」
基本的に、マネージャー以外は誰の部屋も大抵ノックなしで入るのが、俺たちなりの、ある種の友情。
――でも、俺は今―――
「あれ?綱海さん?……トイレ?」
きょとん
アタマの中で流れたその効果音に合わせて、首を小さくかしげる癒し系もふもふ。
こいつのこういうところがたまらなく可愛い
(多分、円堂も同じような反応はするんだろーけど 何かこいつのほうが、こう…キラキラ度が違ぇんだよ!)
「……綱海さぁん?」
声が近くなった。今だ。
「呼んだかたちむかあああいいいッ!!!!」
潜んでいたクローゼットの扉を勢いよく開けて、飛び出す。いや、寧ろ飛び付く。
案の定驚いて、アタマが状況整理で忙しい後輩
そんなかわいい後輩に、ここぞとばかりにべったべたする。
「とぅなみはん!いはいれふ」
“綱海さん!痛いです;;”
と言ったのだろう
べったべたの一貫、必殺 左ほっぺをひっぱる を現在進行形で受けている、癒し系から発される言葉は、意味不明のボイスになる。
「お前のほっぺがやわらけーから痛ぇんだろー?!」
「ひろいれふー!!」
もちもちふにふにさらさらの国宝ほっぺが尚も抵抗する
あまりひっぱりすぎて跡がついてもかわいそうなので、手を離す。
「びっくりしただろ?」
わざと聞いてみる
「び…びっくりというか…ちょっと驚いただけ…ですよ!」
「それがびっくりしたって言うんだろー!」
けらけらとお互いの笑い声が響く。
「これ、他のやつにもやってみないか?」
「いいですね!」
こうして、俺の国宝ほっぺ限定のいたずらは
流れで全後輩(+同期一人)に矛先が向いた

……まぁ、楽しそうだからいーけど!!
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