inzm L

□ただの声じゃない。
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空がほんのりと夜の色を帯びてきた。
練習終了の合図である、監督の大きな声がグラウンド中に響き渡る。
「あーやっと終わったー!!!!!」
「疲れたー!」
今までの疲れを声にして、全員の緊張の糸が切れた。
イナズマジャパンのメンバーとして
練習以外のときは仲間であって、いい友達でもあるが、練習中はライバルに一変する。
だけど…
俺から見たあいつは、いつ何時であれ、そのどちらにも当てはまらない。
他のチームメイト居るときとは、何かが違う。
その理由は分かってる。
だけど、認めたらいけない。
他のチームメイトとは違う意味で
「円堂が好きだから」
だなんて。


今日のボーたん(ボール片付け担当)は、二年の半分と三年だった。
だけど偶然、円堂の自主キーパー練習のためのシュートを、俺が撃つことになった。
そのお陰で、夕飯まで45分あった内、20分は心が爆発しそうだった…。
勿論ボーたんの仕事は、俺たちに一任された。

てきぱきとボールを片付けて
早歩きで少し先を進む円堂と
他愛のない話をしながら、ロッカールームへ行った。
二人きりだなんて、初めてかもしれない。
自分は上手く、この緊張と愛しさを隠せているのだろうか…。
そういえば、さっきから行動が早いような。
いくら円堂とはいえ、やっぱり気付いたのかもしれない。
それで俺から早く逃げようとして…。
一番いい結果のはずなのに
目からは涙が溢れ出た。
気付かれちゃ駄目だ。
いっそ気付かないふりでもして宿舎に帰って欲しい…。
そう思っても、俯いた俺を見て円堂は
「どうしたんだよ風丸…?!」
なんて言って、気遣ってくれる。
もう無理なんかしなくていいのに。
俺がいつまでも諦めきれずに居るから…。
「風丸…何かあったなら聞くぜ?」
そうやってかけてくる言葉は
全部「友達」や「チームメイト」としての言葉…
その言葉に対して「好きだ」なんて間違ってるんだ。
「……っ何でも…、…ない…っん、だ…」
逃げようと思えば逃げれたのに、気を使ってくれてる円堂に申し訳無くて、更に涙が出てくる。
「…何でもなくなんかないんだろ? お前が泣くことなんて初めてだし…」
「………」
ずっと、黙っていた。
俺に語りかける円堂の声が胸に突き刺さって痛い。
夕飯を言い訳にしても帰れたのに
もう夕飯の時間もとっくに過ぎてしまっていた。
「あ…もしかして、俺には言えない話なのか…?」
久しぶりに円堂の言葉をちゃんと聞いた。
円堂だけじゃない。
誰にも言えない。俺の心の中で解決しなければいけないことなんだ。
そう思って、首を左右に振った。
「………今は…」
「今は?」
やっと言葉を発した俺に
円堂は目を見開いて膝を進めた。
「……今は、…っ 言え、…ない」
散々円堂の時間を奪っておいて、結局「言えない」だなんて
何て情けないんだろう。
「そっか。何か俺もしつこく聞いて悪かったな…。またいつか気が向いたら話してくれよな!」
俺の悔恨なんて無かったかのように、無邪気で優しい笑顔で笑いかけてくれた。
ああ、この笑顔が好きなんだ。
「…円堂」
泣いたせいで掠れてしまった小さな、情けない声で円堂を呼んだ。
「ん?どうした風丸?」
あの笑顔を最後に見れたから
もう後悔はしない。
それからの辛さとも闘える。
「……好きだ…」
「俺もだぜ、風丸!」
擦れ違った
そう思った瞬間、涙で濡れた唇にキスが降りて
「ずーっと待ってたんだ…。ズルしてゴメンな…。」
困った表情でそう言われた。
一瞬だけ、時間が流れていることさえ信じられなかった。
不思議と涙が止まって、それから 持っていたタオルが涙でびしょびしょになっていたことに気付いた。
ぐぅぅううううっ
あんなに愛しいキスをしたあとなのに…円堂の腹の虫はワガママらしい。
「風丸が言わないから腹減っちまったよー!今日の肉半分俺にくれよー!」
ちょっと顔を赤くして言う円堂。
こんなに近くに居れるんだ。
「円堂が言ってくれればよかったじゃないか!それにあげる肉は5切れだけだっ!」
笑顔で返した。

宿舎に帰る前に
もう一回だけ
「よろしく」の意味のキスをした。





___________
風丸が告白する方が絶対オイシイ…v(ぁ
本当は何日か後まで結ばれないor風丸が諦める って展開にしようとしたんだけど
それじゃ風丸があまりにもかわいそうだし
何だかんだでハッピーエンドしか書けないから
結ばれちゃいました!←

要は風丸が告白するのが書きたかっただけ!(ぁ

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