夢小説
□マネージャーのお仕事B
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試合開始のホイッスルが鳴った。
一年チームからのボール。佐久間が軽く突いたボールを、寺門が受け取り、鬼道や辺見、京にパス回しながら攻め上がる。あっという間にミッドフィルダー陣を抜けていった。
「オイ、先輩ってあんなレベルだっけか?」
と自分の後ろにいる一年の誰かがシニカルに笑うが、京は振り向いて肯定しなかった。先輩達の動きがわざとらしいような、なんだかこっちが動かされているような……。
部員全員の練習風景は全て見ているつもりだ。先輩達もそれぞれの悪いクセを直しているはず。
妙な胸騒ぎを感じながら、京は上がっていった。
「いけ!! 佐久間!!」
「おう!」
鬼道が佐久間にパスを送った。勢いを付けて転がってきたボールに、余裕の表情を浮かべながら佐久間が右足を後方へ振り上げた。
その瞬間、ゴールキーパーが不適な笑みを浮かべたのを京は見逃さなかった。
(まさか!)
「ディフェンス! 下がれ!」
咄嗟に振り返って声を張り上げた京の横を赤組の背番号10番のフォワードが駆け抜けていった。すれ違いぎわ、薄い唇に嘲笑を浮かべ。
「遅ぇよ!!」
ダンッ!!
同時だった。後ろから、ボールが蹴られた鋭い音が響いた。
横目で確認すれば案の定、赤組のゴールキーパーは余裕と言うように、佐久間が放った鋭いシュートを止めていた。