夢小説
□元帝国ノ狐と未来人
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「答えろ、未来人のお前が何故我が家にいる?」
「……」
「答えろ」
「……」
「ちょっ、答えて下さい…」
ダメだこりゃと言いたげに肩を下ろした帝国学園の制服姿の少女。彼女は東京。帝国学園サッカー部のマネージャー兼選手である。
今晩の夕食当番なので、部活が終わり急いで自宅に帰ってくれば、自室には一人の少年。
色々と質問をしてみるが、彼は無言のまま京を見つめていた。
その瞳からは感情を読み取れず、ただ見ているとも言えるが、彼女から何かを探ろうとしているようにも思えて不気味だ。
しかし、見覚えのある赤と紫を基調としたサッカーユニフォームに胸の鬼の顔を彷彿させる色分けされたマーク。そして褐色の肌に額に刻まれている奇妙な紋章、炎のように無造作に伸びた銀髪。間違いない。
彼の名はバダップ・スリード。サッカーをなくすために80年後の未来から来た、オーガのキャプテン。数ヵ月前のフットボールフロンティアの決勝戦では、雷門と白熱した戦いを繰り広げた。
雷門に負けた彼らは、未来に強制送還されたはずだが、現在、彼女の目の前にそのバダップはいる。フットボールフロンティアの数ヵ月後である現在に。しかも未来に強制送還された時と変わらない姿で。
「もしもーし、バダップさーん。出来たら答えてほしいなー……。普通、堂々と乙女のベッドに座りませんから」
「……」
「……だんまりですか…。そして私の洒落にもスルーですか…」
長い前髪に隠されていない右の目に憂いを浮かべながら、京は「どうしよう」と頭を抑える。
一方バダップは先程から変わらず、表情を一切変えない。寧ろそれが京に妙な威圧感を与えた。
(ってか、この人どうしたの!? 未来に帰ったんじゃないの!?)
「あの…」
「お前、名は?」
「えっ?」
「答えろ」
自分の言葉を遮られて淡々と問われた事に京は、
(何か主導権握られてる)
と思いながらも「京。東京」と答える。
「東京?」
「そうだよ」
「決勝戦でMFだった?」
「そう! よく覚えてたね!」
「……だがお前の制服は雷門ではないが、それは何故だ?」
「それは…世宇子中に勝つ為に一時期雷門に転入してたの!」
「……」
バダップは何か考えるように京の頭から爪先まで見渡す。
この行動に京は(まさか…)と机の引き出しを開けた。そしてそこから取り出したのは、白い狐の面。
それを取り出した途端、バダップの視線がそれにそそがれる。
「……」
「やっぱり、コレだったか」